「氷上の王 ジョン・カリー」
https://www.uplink.co.jp/iceking/
試写で拝見しており、Twitterに感想を書いただけでこちらには書いていなかったので、遅くなりましたがぜひ多くの方に観ていただきたいので、こちらにも書きます。
高い芸術性でフィギュアスケートに革命をもたらし、1976年のインスブルック・オリンピックで金メダリストとなったジョン・カリーの栄光と孤独、苦悩を描く。バレエダンサーになりたかったが、父親に男らしくないと反対されたために、アスリートであるフィギュアスケート選手となったカリー。彼のスケーティングが圧倒的に美しく、その演技を観るだけで涙してしまう。多くの貴重な映像が登場している。
カリーのスケーティングはエレガント過ぎると当初は評価されず、最初はスーパーでアルバイトをするなど苦労した。だが美しさだけでなく音楽性も素晴らしく、オリンピック金メダルをもたらした「ドン・キホーテ」は美しく音楽的な上に、技術的にも見事だった。プロ転向後の「牧神の午後」の芸術性の高さはまさにバレエを見ているかのようで、ニジンスキー版やロビンス版よりも美しいと感じてしまうほどだ。「シェヘラザード」の官能性も見事で、フィギュアスケートでこのような表現ができるとは、驚くほどである。
カリーは自身のカンパニーを率いてフィギュアスケートとバレエの融合を目指すという夢に身を捧げ、メトロポリタンオペラハウスやロイヤルアルバートホールで公演を実現し、幅広くツアーを行うも無一文となる。そして44歳の若さで、AIDSで命を落とす。