今週末、8月7日、8日にいよいよ公演が行われるNBAバレエ団のマイケル・ピンク振付『ドラキュラ』。
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先日、リハーサルのレポートをお届けしましたが、今回は、8月7日(土)18時公演、および8月8日(日)16時公演に主演する、宝満直也(ドラキュラ役)と竹内碧(ミーナ役)のインタビューを掲載します。
初めてペアを組む二人でしたが、リハーサルでは息の合ったパートナーシップを発揮し、難しいパートナーリングも頻出する、緊張感あふれるパ・ド・ドゥの様子をたっぷり見ることができました。3時間にも及んだリハーサルの直後に、疲れた様子も見せずに二人はお話を快く聞かせてくださいました。
Q.今回は、コロナ禍で振付指導者が来日することができず、Zoomを駆使してのリハーサルとなりました。このような形でのリハーサルの難しさはいかがだったでしょうか?
宝満直也 NBAバレエ団では、2月に上演されたヨハン・コボー版の「シンデレラ」のリハーサルは遠隔で行いました。ただし、公演前にはコボーさん本人が来日して直接指導をして仕上げをすることができました。
今回のようにここまでZoomで行うのは初めてのことで、大体海外の作品というのは、作品の精神に精通しているゲストティーチャーが来日してくださいます。魂を持ってきてくれる作業が必ずあります。これが直接してもらえないというのは無茶苦茶大変な作業ですが、マイケル・ピンクさんはとてもお芝居が上手なので、今どういうシチュエーションで、今君はどういう人物で、というところを演じて見せてくれるので、zoomだからといって違和感なく進められました。もちろんカメラ越しなので位置関係とかはよく実際見ないとはわからないところもありますが、意外とそんなに、彼が細かく指示してくれるので、ストレスなくできました。
竹内碧:ドラキュラは25年前に初演だったのですが、初演のミーナ役のジェーンさん(マイケル・ピンク夫人)が家にいらっしゃったときにはリハーサルも見てくださいました。そういうこともzoomならではのことで嬉しかったです。
Q.『ドラキュラ』は昨年2月の「ホラーナイト」での1幕のみの上演を経て、昨年8月に上演される予定が、一年延期となってしまいました。
宝満:『ドラキュラ』公演は、コロナ禍での公演中止もあったので、一年越しのことになります。最初に振り入れをしていただいたのが2019年の夏になります。そこから2020年の「ホラーナイト」というダブルビルでの1幕だけの上演を経て、本来でしたらその年の8月に上演する予定が延期となり、本当に今年の夏に上演できるのかと思ったこともありますが、いつの間にか4月になり5月になり、リハーサルが始まりました。でもまた緊急事態宣言が出て、実際にはどうなるんだろうという気持ちの中で、不安もぬぐえない中でも、準備を進めています。
竹内:この2年の間に、私はその間に結婚もしたし、子供までも授かったので大きな変化がありました。そうこうしている間に「ドラキュラ」にキャスティングされ、死ぬ気で頑張らなきゃと。出産後に身体を戻すのは大変でした。出産によって体がここまで変化するのだと驚きました。これは産んだことがある人にしかわかりませんね。パートナーの宝満さんにはだいぶ助けてもらって、この役を踊ることができています。どうにかこうにか、一日一日のリハーサルを大切に、zoomを通してもなるべく吸収しようとしています。
Q.お二人のパートナーシップはいかがでしょうか。
宝満;このペアで組むのは初めてです。二人で話し合いながら役を作り上げていっています。
竹内:宝満さんは振付家でもあるので、客観的な目を持っているので的確なアドバイスをしてくださいますね。
宝満:竹内さんは、出産後なのにこんなに動いちゃダメでしょ、というくらい動いているんですよ。
竹内:本来産後は骨盤が元に戻るのには半年くらいかかるのだそうです。私は3月に出産したので、まだ体を戻している途中なのですが、どうにかこうにかがんばってやっています。アクロバットのある場面などは、最初のころは悲鳴を出していました。キャスティングをされたからには責任をもって取り組んできました。
宝満:想像を絶する体の変化だと思うので、その変化は僕には想像することしかできません。そのあたりは相談しながら、気を付けてやっています。ケガをされてしまうと困りますしね。
竹内:そのあたりは気遣っていただいています。今まで脚が上がっていたところも、今はここまでしか行かない、と思いながらも。ここまでしか上がらない、という事実も受け入れて、今できる範囲で一番いいものを見せたいと思っています。家に帰ったら赤ちゃんの育児もあって母親としての仕事も始まりますが、なんとか頑張っています。
Q.ホラーナイトへの出演から延期された今回の公演までの間に、このドラキュラ役、ミーナ役への考え方の変化はありましたか?
宝満:NBAバレエ団のYouTube動画でも語ったことなのですが、原作の文言として、ドラキュラは背の高い痩せた男と描写されています。怪力無双で燃えるような赤い目の持ち主、と文言が入っており、僕は背が高くないし、力がある方でもないのですが、カンパニーの中では、比較的背の高くて体格のいい人がキャスティングされる役が回ってきます。それこそ平野亮一さんが演じている役というわけで、そこをぼくがどう演じるかということは、とてもやりがいがあります。ちょっと大変ですが、僕にしかないものがあると信じて工夫しながら取り組んでいます。
亮一さんはもう男の中の男、山のような方なので、似合っていますよね。彼はロイヤル・バレエでも多くの場数を踏まれています。ぼくがびっくりしたのは、ホラーナイトの時に来日されたときに、1,2週間しかリハーサル期間がなかったのですが、一日一日、日を追うごとに変わっていくのですね。その役の深掘りの仕方が、もうこっちがはっとさせられるくらいです。そんなに行く、というくらいすごい、流石ロイヤル・バレエのプリンシパル、というものでした。
竹内:今まで私はクララのような少女のような、可愛らしい役が多かったのです。今回のミーナ役は、マイケル・ピンクからもストロング、強い女性と言われていて実際に強い女性だと思うので今までになかった役で挑戦ですね。演じるというよりこの役を自分の体に入れて、身体の中心をミーナにして踊るということでやらないと表現できないと思うので、そこは意識しながらやっています。子どもを産んだり新しい経験は増えたので、そういう経験も加えていくことで役に入り込めたらと思います。マイケルさんはとても細かく、ここはこのような心情で、など細かく言ってくださるので、役がストンと落ちることもあります。そうすると、状況もわかるので演じやすくなりますね。リハーサルはとても楽しいですね。いろんな発見もあります。
Q.この作品の魅力はどんなところになると思いますか?
宝満:ストーリーがとてもしっかりしていて、いろんなドラマがあります。それがありつつ、わかりやすいですし、観ていても楽しいと思います!ぼくは振付も行っているので、振付家本人と仕事ができるのは、その点でもとても勉強になります。
ぼくが作品を作るときに気を付けているのは、跳んだり回ったりというのは見せていないのですが、ニュアンスだったりシチュエーションだったというのは可能な限り自分がやって見せているようにしています。マイケルさんは実際に自分がドラキュラ役を演じていたので、その彼が実際にちゃんと演じて見せてくれているというのは、ダンサーとしてはとてもやりやすいと改めて再確認しましたね。昨年外部の公演(大和シティバレエ)で『美女と野獣』を振り付けましたが、その時もいろんな役を自分で演じて見せて、どのようなことをしてほしいかをダンサーには伝えるようには努めていました。
Q.この1年半ほど、コロナ禍が深刻な状態で、劇場が閉まって公演のキャンセルが続いた時期がありました。その間に感じたことについて教えてください。
竹内:一回目の緊急事態宣言の時には公演もキャンセルになってしまったので、今後どうなっていくのかな、とちょっとした不安はありました。その間もバレエ団はzoomを使ってレッスンはしてくれていました。稽古場でのレッスンもできるようになり、感染対策も気を付けるところがわかってきて先が見えてきたので、今は予防に気を付けながらもリハーサルもできるのでそこは良かったと思っています。マスクを着けたままのレッスンはつらいので、早くマスクなしでできるように状況が良くなれば良いのですが。
宝満:マスクをつけてのリハーサルだと表情が見えないのが難しいところがあります。本番前日などにならないとマスクを外すことができないのはつらいところです。日本の場合は、ひやひやしながらもまだ公演ができているので良いほうだと思います。(芸術監督の久保)紘一さんの、「わしはやったる」という大胆さがあるので助かっています。ぼくたちはなんだかんだ舞台に立てないと、苦しいものがあります。この間、ハンブルク・バレエの菅井円加さんと会って話したのですが、1年以上舞台公演がなくて、リハーサルだけで、この間やっと本番を行うことができたとおっしゃっていました。それはかわいそうだと思いました。その代わりちゃんとお給料が出るのですが、それでもそれでも大変だなと思いました。こちらはコンスタントに舞台公演はできていますのでその点は恵まれています。
Q.『ドラキュラ』公演を楽しみにしている方、そして公演を観に行くことを検討している方へのメッセージをお願いします。
竹内:2年越しで、ようやく皆さんに私たちの『ドラキュラ』を観ていただける機会となり、公演ができると信じて私たちは毎日毎日集中してリハーサルに取り組んでいます。きっと素晴らしいものをお見せできると思うので、ぜひぜひ、劇場で観ていただけたら、と思っています。舞台装置、衣装、音楽も素晴らしいのでぜひ見てほしいです。キャストによっても作品のカラーが全然違うと思います。平野さんのドラキュラの回と、宝満さんのドラキュラでは全く違いますので、両方観てほしいですね(笑)。
宝満:大変な状況の中ですが、NBAバレエ団ができる最高のパフォーマンスをできるようにみんなで積み上げている最中です。感染状況などが懸念されていますが、より多くの方に観ていただければ、というのが僕の気持ちです。
公演概要
公 演 名: | 『ドラキュラ』 |
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日 時: | 2021年8月7日(土) 14:00開演(開場13:15) 18:00開演(開場17:15) 2021年8月8日(日) 12:00開演(開場11:15) 16:00開演(開場15:15) |
会 場: | 新国立劇場 中劇場 |
チケット料金: | 7日14時/8日12時 →チケット販売終了 S席 15,400円 A席 11,000円 7日18時/8日16時 →発売中 S席 11,000円 A席 8,800円 ※3歳未満の入場はご遠慮ください。 |
チケット取扱い: | ● NBAバレエ団 04-2937-4931(月~金 9:00~17:00) ● チケットぴあ (Pコード:506-459) 0570-02-9999 ● イープラス |
※ゲスト公演はチケット完売です。
https://www.nbaballet.org/ticketnet/ticketnet.html
芸術監督:久保紘一
原作:ブラム・ストーカー
作曲:フィリップ・フィーニー
振付:マイケル・ピンク
舞台美術:レズ・ブラザーストン