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7/29 世界バレエフェスティバル全幕特別プロ「ドン・キホーテ」

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世界バレエフェスティバルの華やかな幕が開けました。

http://www.nbs.or.jp/stages/2015/wbf_pro/index.html

Donquixote

キトリ/ドゥルシネア姫:アリーナ・コジョカル
バジル:ワディム・ムンタギロフ
ドン・キホーテ:木村和夫
サンチョ・パンサ:岡崎隼也
ガマーシュ:梅澤紘貴
メルセデス:ヴィエングセイ・ヴァルデス(第1幕)/川島麻実子(第2幕)
エスパーダ:柄本 弾
ロレンツォ:永田雄大
キトリの友人:乾 友子、吉川留衣
若いジプシーの娘:奈良春夏
ドリアードの女王:渡辺理恵
キューピッド:松倉真玲

Wbf2015

今回の世界バレエフェスティバルは、全幕プロが一公演だけだったのが残念だったけど、コジョカルとムンタギロフという豪華ゲスト。「ドン・キホーテ」は東京バレエ団の鉄板演目で、この主役とこの版の上演で、公演の成功は約束されていたようなもの。

コジョカル、ムンタギロフとも、非常に好調な状態で公演に臨んでくれたようだった。コジョカルは、ほぼ理想的なクラシックラインを持ち、愛らしくも生き生きとしていておきゃんなキトリを好演。彼女の美点は、このようなゲスト出演の時でも、出演者たちにしっかりと目線を送り、物語の中に巻き込んでしまう稀有な能力にある。2幕のグラン・パ・ド・ドゥでもしっかりドン・キホーテのことを見ながら踊り、ガマーシュやロレンツォなどのキャラクターにもしっかり気を配る。バジル役ムンタギロフとのコミュニケーションも良く取れていて、ラブラブのカップルぶりが微笑ましい。特に少し恥ずかしそうにはにかむところの愛らしさには、誰もがとろけてしまうことだろう。

高い身体能力を持つ彼女のこと、ピンと高く上がる脚、強いポワント、浮かび上がるようなジュッテと、ともすればやりすぎに見えてしまうほどの強靭さが発揮されているのだけど、それも違和感を感じさせないところが彼女の演技力というべきだろうか。バランスは非常に安定していて、片手リストで持ち上げられている時にもびくともしないし、アカデミックで精密なライン、正確なテクニックには惚れ惚れする。一方でドルシネア役の時は軽やかで夢の世界の住民にふさわしい繊細な美しさも発揮した。

ムンタギロフは、バジル役には少し優雅すぎるところもあるが、エレガントで美しいバジル。若くて快活さもあるけれども、育ちの良さが隠せないようなところがある。ふわりとした跳躍と柔らかい着地。長い首と小さな顔、長身は王子さま的である。が、身長差のあるコジョカルとのパートナーシップは鉄壁で、サポートが非常にうまい。片手リフトはとても長いし、ダイビングするところのキャッチも力強い。そして2幕まで体力も温存していたようで、最後に大炸裂してくれた。美しい横開脚のジュッテ、非常に高いトゥール・ザン・レール、つま先まで伸びたマネージュ、お見事だった。欲を言えば狂言自殺の時の演技がもう少しコミカルだったら、もっと良かった。

メルセデス役の1幕に、特別ゲストのヴィエングセイ・ヴァルデス。キトリ役でバレエフェスで沸かせた彼女なので、メルセデス役は見せ場が少なくもったいない感じではあるけれども、華やかで鮮やかに魅せてくれた。

東京バレエ団の「ドン・キホーテ」がプロダクションとして定評があるのは、キャラクテールの演技のうまさに負うところも大きい。ドン・キホーテ役の木村さんは、気品があれども少し耄碌してしまった老人。だけどあくまでも上品なので、物語に説得力を与えることができる。サンチョ・パンサの岡崎さんはちょこまかよく動くし、ガマーシュの梅澤さんは、ハンサムながらもコミカルで抜けているガマーシュぶりで踊りもエレガント。エンディングでは、サンチョ・パンサやガマーシュがたくさん踊ってくれるしガマーシュにとってもハッピーエンドが用意されているので楽しい。

そして女性ソリストたちのクオリティも高かった。キトリの二人の友人乾さん、吉川さんは、特に2幕のヴァリエーションはクラシカルで非常にレベルが高い。ドリアードの女王の渡辺さんはとにかく脚が美しいし、優雅だ。この版はイタリアンフェッテがないので少し地味なのだけど、ポール・ド・ブラの腕の運び方もきれい。キューピッドの松倉さんは、小柄なれど脚がとても長く、グランジュッテもとても高くて身体能力が高い。若いジプシーの娘の奈良さん、情熱的で怨念のこもったような踊りが振り切れていて良かった。コール・ドも、特に夢のシーンでの揃い方が素晴らしかった。

女性ダンサーたちのレベルが非常に高いので、男性陣はもう少し頑張れ、と感じた。柄本さんのエスパーダは、もう少し足先や膝を伸ばしてほしいし、もっとキメキメにしてくれないと、他の主演キャストに対抗できない。特にバジルがムンタギロフという並外れて美しいプロポーションの持ち主なのだから。ほかにこの役に似つかわしいダンサーはこのバレエ団にいるのに、と感じてしまった。踊り以外のモブシーンの演技は非常にこなれていて、コジョカルの演劇性の高さも貢献しているにしても、自然にコミカルで明るい雰囲気が盛り上げられていた。

しかしいずれにしても、世界バレエフェスティバルのオープニングにふさわしい、楽しく華やかで質の高い公演で、会場にいた誰もを笑顔にすることができた良い公演だった。


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