ABTを、そしてアメリカを代表するプリマ・バレリーナとして29年間活躍し、昨年引退したジュリー・ケント。引退後は、カンパニー、ABTのサマー・インテンシヴの主任教師、そしてABT付属ジャクリーン・ケネディ・オナシス・スクールで教えていました。
そのジュリー・ケントが、ワシントン・バレエの芸術監督に就任することが発表されました。
17年間芸術監督の任にあったSeptime Webreが退任するにあたって、今年の7月1日にケントが就任することになったものです。
ワシントン・バレエは40年の歴史があるものの、正団員21人の小規模なカンパニーです。日本人プリンシパルの大貫真樹さん、ヴァルナ国際コンクールで金メダルに輝き、最近ではENBの「海賊」にゲスト出演したり、日本でもガラ公演に出演しているブルックリン・マック、ジャクソン国際コンクールで銀メダルを取った宮崎たま子さんなどが所属しています。レパートリーは、古典から現代作品まで幅広く、スクールには1000人以上の生徒がいます。昨年は、ABTのミスティ・コープランドをゲストに迎えての「白鳥の湖」公演がありました。
ケントの夫君、ヴィクター・バービーも元ABTのプリンシパルで、ABTの副芸術監督として働きつつキャラクター・アーティストとして舞台に立っていました。バービーはワシントン・バレエの副芸術監督に就任し、ケントと二人の子供たちとワシントンに引っ越すことになります。
上記ワシントン・ポスト紙のインタビューによれば、ケントは当初、芸術監督のオファーを受諾しませんでした。ニューヨークでの生活、長年過ごしたカンパニーとの生活を愛していたからです。しかし結局、この仕事を引き受けたのは、アメリカではまだ珍しい女性芸術監督という仕事につけることが一つ。そして、ワシントン近郊のメリーランド州に生まれ育っており、今も母親が暮らしている街だということが二つ目の理由でした。
新しい芸術監督を迎えることで、ワシントン・バレエはカンパニーの規模を拡大し、地域社会での存在感を拡大することを狙っています。現在21人の団員を2023年までに40名程度に増やし、一年に2人程度増やすことを目標にしているそうです。
なお、デヴィッド・ホールバーグは、ワシントン・バレエのボードメンバーに昨年選ばれています。彼はABTでジュリーと踊ったことがあり、また彼女が教える様子も見てきました。「彼女の素晴らしさに、カンパニー全体が触発するところを見ました。主役だけでなく、一番新しい研修生までもしっかり見ることができる人です」と彼は電話インタビューで答えました。
ケントによれば、彼女はワシントン・バレエの2016-7年シーズンの計画の概要を、現在のレパートリーを基に作ったとのことで、数週間後に発表されるとのことです。現在のダンサーたちをよく見てから、新しい作品を加えるかどうかを決めるとのことです。
ABTは、ケヴィン・マッケンジーが1992年以来ずっと芸術監督を務めており、そろそろ交代しても良いころです。が、有力候補の一人であるヴィクター・バービーが、ジュリー・ケントと共にワシントンに行ってしまったため、今後どのようになるのか不透明になってきました。常任振付家のラトマンスキーは、芸術監督の仕事にはもう関心がないと語っています。今年2月に、リンカーンセンターのエグゼクティブだったKara Medoff Barnettがディレクターとして就任しました。また、元プリンシパルのイーサン・スティーフェルが、ロイヤル・ニュージーランド・バレエの芸術監督を退任後、カンパニー教師となっています。多くのスターが引退し、今年のMETシーズンではアレッサンドラ・フェリ以外のゲストダンサーを招いていないこともあり、チケットの売れゆきは低迷しています。
なお、ワシントン・バレエが本拠地とするケネディセンターの2016-7シーズンが発表されています。(ワシントン・バレエの公演予定については未定)
http://www.kennedy-center.org/pages/SpecialEvents/SeasonAnnouncement
主なバレエ上演予定は、
サンフランシスコ・バレエの「シンデレラ」(クリストファー・ウィールドン振付)10/26-30
ABTの「白鳥の湖」1/26-29
マリインスキー・バレエの「イワンと仔馬」(ラトマンスキー振付)1/31-2/5
アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター 2/7-12
ハンブルグ・バレエの「人魚姫」(ノイマイヤー振付)3/28-4/2
ミスティ・コープランドとジャスティン・ペックによるプログラム 4/18-23
ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)6/6―11
と言ったところです。