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ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」(映画館上映)

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少し感想が遅くなってしまいましたが、ただいまBunkamuraル・シネマで「ボリショイ・バレエ in シネマ」がアンコール上映中なので、「ドン・キホーテ」の感想を書いておきますね。

ドン・キホーテ / Don Quixote 2016年4月収録

キトリ エカテリーナ・クリサノワ
バジル セミューン・チュージン
ドン・キホーテ アレクセイ・ロパレーヴィチ
エスパーダ ルスラン・スグヴォルツォフ
森の女王 オリガ・スミルノワ
キューピッド ダリア・ホフロワ
街の踊り子 アンナ・チホミロワ
メルセデス クリスティーナ・カラショーワ
キトリの友達 アンナ・オクネワ
         クセニア・ジガンシナ
ジプシーの踊り アンナ・アントロポワ
第一ヴァリエーション アンナ・チホミロワ
第二ヴァリエーション ユリア・ステパノワ 

音楽:レオン・ミンクス
振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
原振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
台本:マリウス・プティパ
原作:ミゲル・デ・セルバンテス

ボリショイ・バレエの「ドン・キホーテ」は新国立劇場バレエ団で上演されているアレクセイ・ファジェーチェフ版(新国立版とは、3幕キューピッドの踊りがカットされているなど、多少異なる部分もある)。新国立劇場での上演の感想の時にも書いたけれども、2幕の順番が酒場→ロマの野営地→夢の場面となっているのが、ストーリーの上では整合性がないという問題がある。今回は新しく改訂したとのことだが、演出として酒場のシーンにジークという踊りも追加したのだが、冗長になっていたうえ、さらにギターの踊りもあるため、中だるみして上演時間が必要以上に長くなってしまった。また衣装も地味で垢抜けないものとなってしまった。

イントロダクションと幕間の休憩時間に、ファジェーチェフのインタビューがあり、「ドン・キホーテ」という作品については参考になる話が入っていたのは興味深かった。キトリの3幕ヴァリエーションの曲は、実はオリジナルの「ドン・キホーテ」の曲ではなく、「ロクサーヌ」という別のバレエ作品のためにミンクスが作曲したとのこと。ギターの踊りとジークはザハーロフの振付(音楽もミンクスではなく、V. Soloviev-Sedoy)、2幕ジプシーの踊りもゴレイゾフスキーの振付、Zhelobinskyの音楽、ファンダンゴは振付シマチョフで音楽は E. Napravnikとのこと。また、モスクワでの初演では、夢のシーンはなく、サンクトペテルブルグでの初演で追加されたそう。

キトリ役のエカテリーナ・クリサノワはテクニックが素晴らしい。グランフェッテも前半全部ダブルで超高速でコマのように回り、2幕の飛び込むところの勢いもポーンと凄くて飛距離も長く跳んでいる。1幕カスタネットの踊りの連続フェアテのスピードも猛烈に速い。天を突き刺すバットマン、彼女のキトリは元気良いというか、手の付けられないじゃじゃ馬という感じだが、気風の良さと情熱が現れている。とても個性的だけど、生命力が迸っており、非常にインパクトがあって魅力的なキトリだ。

クリサノワが踊るドルシネアは、ドルシネアの割にはお姫様度が低いというか、特に後半はほとんどキトリって感じだった。腕の使い方はきれいだし、グランジュッテはとても高いけど、もう少しエレガントに踊ってほしい気もした。

森の女王には、最近キトリ役デビューも果たしたオルガ・スミルノワ。スミルノワは安定していて綺麗だけど、ワガノワな優雅な部分が抜けてすっかりボリショイのバレリーナとなり、やや残念な気もしてしまった。非常に溜めの効いた、大げさで派手な上半身の動きはダイナミックで映えるけど、首の動きがやりすぎな印象を与えてしまうのである。

スミルノワと同じ元ワガノワ組として、1幕にはまだ入団2年目のクセニャ・ジガンシナがキトリの友達として、そして3幕の第2ヴァリエーションではマリインスキーからモスクワ音楽劇場を経て昨年移籍してきたユリア・ステパノワが出演。ジガンシナはまだ際立ったところはないけれども、ボリショイでのキトリの友達は、とても生き生きとしていてスパイスとなる役。これを観ると、新国立劇場バレエ団でのキトリの友達役はおとなしかった、と感じてしまう。

一方、ステパノワはここに来て急に抜擢が続いており、ロンドン公演では「白鳥の湖」のオデット・オディールなどの主演が予定されている。彼女のポジションの正確さやポールドブラの美しさは目を引き、おそらく来年の来日公演でも大活躍することだろう。

第一ヴァリエーションのアンナ・チホミロワは、1幕では街の踊り子も演じた。艶やかな美貌のチホミロワは、キャラクター的にも、踊り的にも街の踊り子役の方が似合っていてこちらはとても素敵だったけど、ヴァリエーション観ると細かいことを気にしていなのが、ステパノワとの対比でわかってしまった。

もう一方の主役、バジル。セミョーン・チュージンは王子タイプであまりバジルタイプダンサーではないのだが、この人は踊りは実にうまい。つま先も綺麗だし、ピルエットはコントロールが効いてきれいに回るし、とても軽やかに飛ぶし着地も美しい。片手リフトもとても長くしっかりと支え、ものすごい勢いで飛び込むクリサノワも的確にキャッチ。技術的には文句なし。相変わらず口が歪んでいるけど、ドヤ顔はしっかり見せていた。ユーモアのセンスがもう少しあれば、もっとバジルらしくみえるかもしれない。

エスパーダはルスラン・スグヴォルツォフ。今回のファジェーチェフ版でのエスパーダの振付って、エスパーダの見せ場をわざわざ削っているような印象を受けてしまった。マントを振り回しながら背中反らせる振付がなかったのが残念。でもルスランは足技綺は麗だし、プリンシパルだけあってスター闘牛士らしい存在感もしっかり、大人っぽいけど魅力的で、チホミロワとの並びも良かった。

新国立劇場バレエ団の「ドン・キホーテ」ももちろん、とてもクオリティの高い上演だった。だけど、やはりボリショイが演じると脇役まで生き生きとしていて、ロシア人なのにラテン気質も見せてくれて、映画館のスクリーンからも勢いが伝わってくる。

Bunkamuraル・シネマでのアンコール上映は、6/3(金)19:15開演とあと1回。まだの方は、ぜひ。
http://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/2016/05/bol2016.html

5月26日(木) 19:15~『ジゼル』
5月27日(金) 19:15~『椿姫』
※26日(木) 19:15~『ジゼル』、27日(金) 19:15~『椿姫』は、両日ともにシネマ1,2両スクリーンで同時に上映となります。シネマ1,2ともに同内容で、スクリーンの大きさもほぼ同等となります。

5月28日(土) 19:15~『スパルタクス』
6月2日(木)  19:15~『じゃじゃ馬ならし』
6月3日(金)  19:15~『ドン・キホーテ』
6月4日(土)  19:15~『ジゼル』
6月9日(木)  19:15~『くるみ割り人形』
6月10日(金) 19:15~『スパルタクス』

★全作品予告編なし、本編からの上映

≪料金≫ 3,000円均一(税込・各種割引は対象外となります。)  


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