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3/28 NHKバレエの饗宴 2015

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NHKバレエの饗宴 2015
http://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=455
2015年3月28日 (土曜日) 17時開演
NHKホール

指揮 園田隆一郎
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団


第4回目となったNHKバレエの饗宴。2回目だけ足を運んでいないので観に行ったのは3回目。

前回は、オープニングでダンサーが紗幕の向こうで少し踊りを見せてくれる趣向だったけど、今年はそれはなくなって、リハーサル映像を少しデジタル処理したものが映し出された。上手のバルコニーにバンダが現れてのファンファーレ。指揮者が、前年までの大井剛さんでなくなってしまったのが少し残念。


牧阿佐美バレエ団
「パキータ」

振付 マリウス・プティパ,改訂振付 アレクサンドロワ・ダニロワ,牧阿佐美
音楽 ミンクス
プリンシパル 青山季可,菊地研
パ・ド・トロワ 織山万梨子,米澤真弓,清瀧千晴
ヴァリエーション 伊藤友季子

私たちが見慣れている「パキータ」とはすこし構成と編曲が違っているダニロワ版。パ・ド・トロワの他はヴァリエーションは聴き慣れない音楽のものが一つ入っているだけ。ガラ公演での「パキータ」というと、テクニック自慢のソリストが華やかなヴァリエーションを繰り広げるのが通常なのに、それがないのがつまらない。つい先週、ネット中継していたテリョーシキナ・ガラの「パキータ」で、テリョーシキナはじめ、コンダウーロワ、オスモルキナのようなスターバレリーナを観たばかりなので余計にそう感じた。

パ・ド・トロワの清滝千晴さんが素晴らしかった。バロンのある跳躍とはこのことを言うのだろう、浮かび上がるようで、アントルシャ・シスも高い。身体もやわらかいようだった。菊地研さんも、ジュッテに高さがあって良かった。青山さんは、エトワールのヴァリエーション、きちんと踊っていたのだけど、印象にあまり残らないようなさらっとした踊り。その代わり、コーダのグランフェッテは、2回に1回ダブルを入れていて軸もしっかりとして余裕があるほどで、見事だった。

しかしそれ以外の水準は残念ながら低く、これがテレビに映ってしまうと思うといかがなものかと感じられた。ヴァリエーションで伊藤さんはイタリアンフェッテ、最初から不安定で途中で落ちて失敗。コール・ドも、途中で皆がグランフェッテをするところがあるのだけど、途中からよろよろとよろけて、ぐだぐだになっていた。新国立劇場バレエ研修所出身のダンサーも数人いたのに、このレベルとは。1回目の「バレエの饗宴」の「ライモンダ」の出来も残念だったわけで、なぜこのレベルのバレエ団がここに出られるのか。セットも衣装も貧弱で、祝祭感にも欠けた。


Noism 1
「supernova

演出・振付 金森穣
音楽 黛敏郎「G線上のアリア」
衣装 ISSEY MIYAKE 宮前義之
演奏 (ヴァイオリン) 渡辺玲子
井関佐和子
亀井彩加,角田レオナルド仁,簡麒麟,石原悠子,池ヶ谷奏,吉崎裕哉,梶田留以,佐藤琢哉

今回は、このNoismの新作を観ることが最大の目的。黛敏郎作曲の「G線上のアリア」という曲を、NHKのプロデューサーに紹介されたことがこの作品を創るきっかけとなったという。Noismというカンパニーは、良くも悪くも、井関佐和子さんという圧倒的なカリスマ性のあるダンサーが中心となっている。その彼女を星とみなし、星と周囲の闇との関係性を作品にしたという。幕が開くと、天上から射し込むダウンライトの下には、真っ白な衣装の井関さん。この衣装が、白いユニタードの上に白いネットのようなもので顔を含む全身を覆うというものなので、表情を読み取ることはできない。残り8人のダンサーたちは、この衣装の黒バージョン。三方をスクリーンで囲まれ、井関さんを中心に、この星と闘争を繰り広げたり、闇同士がぶつかりあったり。 黛敏郎の不協和音を奏でる渡辺玲子さんのヴァイオリンが、ものすごいひりひりとした緊張感を与える。その中でも、孤高の存在であり続け、一人輝きを放つ井関さん。クラシックバレエをベースにした、研ぎ澄まされた動きはゆっくりだけどアカデミックで一つ一つのポジションが美しい。場を支配する力は、この広いNHKホールの隅々にまで届いていたと思う。15分という短い上演時間だけが残念だが、これはヨーロッパのカンパニーにも負けないクオリティの高い舞台。しかも、黛の音楽を使っており、闇と光との戦いという東洋的なテーマも使っていて、グローバル性を感じさせる。

Noismのいち早い公演報告
http://noism.jp/reports/%E3%80%8Cnhk%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E3%81%AE%E9%A5%97%E5%AE%B42015%E3%80%8D%E3%81%8C%E7%B5%82%E5%B9%95%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82/


下村由理恵バレエアンサンブル
「カルメン」から抜粋

演出・構成・振付 篠原聖一
音楽 ビゼー ほか
出演 下村由理恵,山本隆之,森田健太郎

天井から降りる布と棒を使ったシンプルな舞台装置であるにかかわらず、照明の使い方などの工夫で、場面転換もスムーズで、非常に巧みな舞台づくりであった。「カルメン」の物語をうまくコンパクトに35分間のものに縮めているし、ラストの赤い照明の効果も見事だ。下村さん、もう50歳だと思うのに、テクニックは揺るぎないし、ドラマティックな表現が素晴らしい。カルメンそのものになりきっている。ドン・ホセ役の山本さんも、カルメンに翻弄されて運命を狂わされていく様子を好演。相変わらずの優柔不断な色男ぶりがはまっていた。彼らのような大人のダンサーが、今の日本には少ないのである。湯川麻美子さんが引退してしまう今、新国立劇場バレエ団に足りないのは、下村さん、山本さん、湯川さんのような人なのだ。
少ない人数と予算でも、素晴らしいダンサーと演出の工夫があれば、充実した舞台を作ることができる良い例である。


新国立劇場バレエ団
「眠れる森の美女」から第3幕

振付 ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(ギャヴィン・サザーランド編曲)
オーロラ姫:小野絢子
デジレ王子:福岡雄大
リラの精:寺田亜沙子
国王:貝川鐵夫
王妃:佐々木美緒
式典長カタラビュート:輪島拓也
宝石 エメラルド:細田千晶
   サファイア:柴山紗帆
   アメジスト:奥田花純
   ゴールド:奥村康祐
フロリナ王女:米沢唯
青い鳥:井澤駿
白い猫:原田舞子
長靴を履いた猫:原健太
赤ずきん:広瀬碧
狼:福田紘也
親指トム:八幡顕光

公演を結ぶのは、新国立劇場バレエ団が昨年新制作した「眠れる森の美女」。最初に登場するカタラビュットの輪島さん、マントを翻す姿がとても絵になって素敵だしドラマの幕が開ける感じがする。主役は、セカンドキャストの小野絢子・福岡雄大ペア。小野さんは、いつの間にか揺るぎないプリマオーラを身につけた。可愛らしく初々しいのに、踊りは揺るぎない。伸びやかで鷹揚で大切に育てられたお姫様なのだけど、やがては女王になる身という貫録も感じさせる。小野さんは音楽性がとにかく素晴らしく、コーダのフェッテなど難しいことも軽々と、たやすいことのように魅せてしまうし、余裕がある。福岡さんの、サポートは今回しっかりしていたので3回のフィッシュダイブもスムーズに行われていた。福岡さんは、ヴァリエーションでも、トゥールザンレールはしっかり綺麗に5番に降りられていたし、少し重さはあったものの、ほぼ完ぺきな出来。締めくくるのにふさわしい風格のある二人だった。

新国立劇場ではオーロラ役のファーストキャストだった米沢さんは、今回はフロリナ姫。さえずるような軽やかさ、鳥のような飛び立つ感じがあってよかったのだけど、衣装があまり似合わず、オーロラの方が合っていたかもしれない。でも踊りそのものは言うまでもなく精緻で素晴らしい。青い鳥の井澤さんは、足先や跳躍はとても良かったけど、少し上半身が硬く、最後飛び立つところも硬さを感じさせてしまった。でも、まだ入団したばかりであるし、長身と美しいプロポーション、脚の強さがあるので今後大いに期待できるだろう。

宝石は、ゴールドの奥村さんはさすがの端正さだし、速いスピードにもしっかり乗って軽やかに跳躍していた。(衣装が露出度高すぎてちょっとセクシーすぎだが)エメラルド、サファイア、アメジスト、それぞれ良かったけど、なかでも細田さんが繊細で美しい。白い猫と長靴をはいた猫のやり取りもユーモラスで楽しかった。別キャストでゴールドで素敵だった池田武志さんが今回猫の担ぎ役というチョイ役だったのは残念。親指トムの八幡さんの、胸のすくような超絶技巧の数々も楽しかった。

イーグリング版「眠れる森の美女」は欠陥もあるプロダクションではあるけど、こうやって3幕を取り出してガラで踊るには、とても華やかできらびやかで、楽しめた。ワルツやリラの精たちといった出番のすくないメンバーも踊って、美しい絵巻物として目を楽しませてくれるとともに、現在の新国立劇場バレエ団の充実ぶりを見せてくれた。


Noismと新国立劇場バレエ団で十分楽しませてもらった「NHKバレエの饗宴」だけど、回を重ねるにあたって、今後工夫してもらいないと思うところもある。せっかくテレビ放映するならば、ロイヤルバレエの映画館中継の時のように、舞台裏の様子、準備を行うスタッフの様子やリハーサルなどを見せてくれたら、もっと楽しいはず。出演者も、国内バレエ団は一巡したようではあるけど、意外なカップリングやコラボレーションなども観られたらいいな、と思う。そして、日本のバレエ、ダンスの在り方そのものについても、一考しなければならない時に来ているということも、この公演を通して考えさせられた。


NHKバレエの饗宴2015は
4月12日(日)日曜 午後9時~11時
Eテレ「クラシック音楽館」で放映されます。
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/

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