3月29日、ロシアの文化大臣メディンスキーは、ミハイロフスキー劇場の総裁、ウラジーミル・ケフマンがノヴォシビルスクオペラ・バレエ劇場の総裁に就任することを発表しました。
http://www.mikhailovsky.ru/press/news/vladimir_kekhman_vozglavil_teatr_v_novosibirske/
さっそくノヴォシビルスク劇場の総裁として、劇場のサイトにもプロフィールが載っています。
http://www.opera-novosibirsk.ru/names/kehman.php
ケフマンは、ノヴォシビルスク劇場とミハイロフスキー劇場のマネジメントを統合する計画なのだそうです。劇場相互の結びつきを強めることが彼の構想だそうです。彼は週に4日間ノヴォシビルスクで働き、残り3日間はミハイロフスキーで働くそうです。そして、ノヴォシビルスクの劇場名も「シベリア劇場」と改めるとのこと。
ノヴォシビルスクは、人口150万人とロシア第三の都市であり、劇場はロシア最大のサイズを誇る立派なものです。劇場はロシアの国より資金を得て運営されています。
さて、このケフマンの就任劇ですが、ノヴォシビルスク劇場で上演されたワーグナーのオペラ「タンホイザー」が大スキャンダルを起こし、現在の総裁であったボリス・メズドリッチが文化省によって解雇されたために、代わりにケフマンが就任することになったのです。
Director of Novosibirsk Opera and Ballet Theatre fired in religious backlash
http://siberiantimes.com/culture/theatre/news/n0169-director-of-novosibirsk-opera-and-ballet-theatre-fired-in-religious-backlash/
Theatre director fired over Wagner opera that offended Russian Orthodox church
http://www.theguardian.com/world/2015/mar/29/russian-director-fired-over-wagner-opera-that-offended-powerful-orthodox-church
Timofey Kulyabin演出によるこの「タンホイザー」はロシア正教を冒涜し、西洋の堕落した価値観を押し付ける内容だったとのことで、何千人もの人々が抗議のデモ隊となって劇場に押し寄せたそうです。一方で、知識人たちの主導による芸術の自由を守れというデモもあったようなのですが、プーチン大統領がロシア正教会の重要性を強調し、西洋的な価値観を否定している今のロシアでは、宗教原理主義の方が強いようです。
イズヴェチヤ紙の記事によれば、文化大臣メディンスキーは2週間前、メズドリッチに面会し、このプロダクションのための資金を中止し、謝罪することを要求したとのことです。メズドリッチが両方とも拒否したことから、今回の解雇に結び付いたそうです。
ケフマン自身は、ロシア正教は重要なものであり、それを否定するようなプロダクションは上演すべきではないと考えているそうです。ミハイロフスキー・バレエのファンにとっては有名な話ですが、もともとケフマンはバナナなどフルーツの輸入で財をなして、バナナ王と揶揄されていました。豊富な資金で劇場を改装し、たくさんのスターダンサーを連れてきて、ナチョ・ドゥアトを芸術監督に据え、劇場は欧米での知名度を一気に上げたのでした。
なお、ノヴォシビルスク劇場バレエの芸術監督は、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するイーゴリ・ゼレンスキーです。ゼレンスキーは、来シーズンからミュンヘン・バレエの芸術監督に就任することが決まっていますが、ノヴォシビルスク劇場、そして同じく芸術監督を務めているモスクワ音楽劇場バレエの芸術監督の職を辞するわけではなく、3つの劇場を掛け持ちするそうです。