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4/24 ボリショイ・バレエ「じゃじゃ馬馴らし」

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4月25日~29日まで、サンクトペテルブルグに行ってきました。

ちょうどこの時期、ダンスオープンフェスティバルというフェスティバルが開催されており、ボリショイのほか、オランダ国立バレエ、ウィーン国立バレエ、そしてガラ公演もあったのですが日程の都合でボリショイしか観られず、ガラの方は早々にチケットが売り切れてしまったのです。でも、サンクトペテルブルグなのでバレエ公演はたくさんあり、このほかにミハイロフスキー・バレエで「ラ・フィユ・マル・ガルデ」、マリインスキー・バレエでバレエ・リュスプログラムと「ジゼル」を観てきました。

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Choreographer: Jean-Christophe Maillot
Assistant to Choreographer: Bernice Coppieters
Set Designer: Ernest Pignon-Ernest
Costume Designer: Augustin Maillot
Assistant to Costume Designer: Jean-Michel Laîné
Lighting & Video Projection: Dominique Drillot
Assistant: Stefani Matthieu
Dramatist: Jean Rouaud
Répétiteurs: Yan Godovsky, Victor Barykin, Josu Zabala
Music Director: Igor Dronov

Katharina Ekaterina Krysanova
Petruchio Vladislav Lantratov
Bianca Anastasia Stashkevich
Lucentio Semyon Chudin
Hortensio Alexander Smoliyaninov
Gremio Vyacheslav Lopatin
The Widow Anna Balukova
Baptista Alexander Volchkov
The Housekeeper   Anna Tikhomirova
Grumio Georgy Gusev

ボリショイ・バレエのマイヨー振付「じゃじゃ馬馴らし」の上演は、中心街ネフスキー通りからもほど近いアレクサンドリンスキー劇場。エイフマン・バレエなどがバレエを上演することが多く、クラシックで美しい劇場です。今回は音楽は録音でした。座席表で最前列を買ったはずだったのに、この座席表に載っていない補助席がオーケストラピットのところに3列くらいあったので、ちょっと見づらくて残念でした。

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このプロダクションは、黄金のマスク賞で振付を含む3部門で受賞し、今月末に発表されるブノワ賞でも最有力とされている大ヒット作品だけあって、素晴らしかった。ボリショイ・バレエならではの高いクラシックバレエテクニックを生かしつつも、現代的な振付言語を駆使。シェイクスピアという古典的なテーマであるけれど、従来の「じゃじゃ馬馴らし」のミソジニー的な部分を排した新しい解釈。何よりも、スピーディな展開、ユーモア、躍動感、上手くハマったキャスティングで、誰が観ても非常に楽しめる作品に仕上がっていた。主演のクリサノワ、ラントラートフとも、生き生きと楽しげに演じ、キャラクターに生命を吹き込んで、見事なパフォーマンスだった。音楽は、ショスタコーヴィチの作品から24もの楽曲を使用しているとのこと。

http://www.bolshoi.ru/en/performances/714/

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開演前に、黒いシガレットパンツとシースルーのシャツを着て髪に羽根飾りをつけた艶やかで美しい女性が優雅に幕の前を歩き回る。この美女、アンナ・チホミロワの役柄は、キャスト表によればなんと掃除婦とのこと。彼女がピンヒールを脱ぎポワントに履き替えると、物語が始まる。舞台装置はたいそうスタイリッシュで、両側に階段の付いた白いスロープ状の台と柱があるだけ。衣装も洗練されていて、基本的には白と黒のみが使われており、カタリーナのグリーンのスカート、ビアンカの青いスカートがアクセントとして鮮やかに際立っていてモダンな印象だ。

この作品で黄金のマスク賞を受賞したエカテリーナ・クリサノワのカタリーナが生き生きとしていて、まさに手の付けられないじゃじゃ馬娘を好演。高い身体能力を生かし、ビアンカの求婚者たちにパンチやキックを食らわせたり、鮮やかな高い跳躍をいくつも見せたり。最初身につけていたスカートも脱ぎ捨て、ビスチェレオタード一枚の姿になってさらに暴れまわる。脚のラインの美しいこと。マイヨーの振付は、現代的ではあるものの、ボリショイ・バレエのダンサーたちの高い身体能力を生かした、ダイナミックな超絶技巧を盛り込んでいるので、観ていてとても楽しい。

彼女の前に現れたペトルーチオを演じるは、やはり黄金のマスク賞を受賞したウラディスラフ・ラントラートフ。くしゃくしゃの髪によれよれのコート姿で現れた彼は、最初はただの酔っ払い男のようだったが、目にも止まらない速さの見事なソロを見せ、そしてカタリーナとの対決となるとがぜん生き生きとしだす。片手リフトや放り投げたり、アクロバティックなリフトをたくさん盛り込んだ最初のパ・ド・ドゥは見ごたえたっぷり。いよいよ彼女に求婚するときに、いきなり口に赤いバラをくわえて登場し、あまりのチャラ男ぶりに椅子から落ちそうになった。この作品は、チャーミングな二人のユーモラスな演技もたっぷり楽しめる。

カタリーナの妹ビアンカを演じたアナスタシア・スタシュケヴィッチも素晴らしい。姉と打って変わってエレガントではあるものの、見事なテクニックの持ち主で、彼女も高い跳躍を見せながら求婚者たちを翻弄する。求婚者たちも、クランコ版の「じゃじゃ馬馴らし」ほどのコミカルな存在ではなくて、華麗なソロを見せてアピールする。最後に結婚することになるルセンショーを演じるのはセミョーン・チュージン。彼も言うまでもなく、貴公子的な美しい踊り、目の覚めるようなマネージュで魅せてくれる。

ボリショイ・バレエの作品にしては出演者は少なめで、主要キャラクター、ビアンカへの求婚者であるグレーミオとホルテンショー、姉妹の父バプティスタ(アレクサンドル・ヴォルチコフが演じている)のほかは、メイドたち、召使たちが6人ずつと少ないのだが、この群舞もたっぷりとボリショイならではの華麗で美しくエネルギッシュな踊りを見せてくれる。彼らが作品をさらに生き生きとしたものにしている。舞台に立っている誰もが美男美女で、エレガントでファッショナブルな衣装も相まって目に快い。

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2幕では、カタリーナとペトルーチオのパ・ド・ドゥは最初は対決姿勢を見せるものの、やがては官能的なデュエットとなり、ついにはベッドインして途中で上からシーツをかぶせられるほど。「じゃじゃ馬馴らし」の原作やクランコ版では、カタリーナを調教するためにペトルーチオが彼女を飢えさせたり、寝させないといったほとんどDVに近い形で屈服させるので、ミソジニー的であると批判されることが多い。このマイヨー版にはそのようなシーンはなく、対決しているのがいつの間にか二人の間に愛が芽生え、甘いセックスによって2人は結ばれるという描写になっているわけだ。これならば、フェミニストでも納得できるのではないかと思われる。このラブシーンでは、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏8番が使われており、ショスタコーヴィチの激しい不協和音が、2人の盛り上がる感情を的確に表現している。ビアンカとルーセンショーの美しいパ・ド・ドゥがそのあと続く。

大団円では、ショスタコーヴィチのジャズ組曲から「二人でお茶を」のメロディが流れ、夫に忠実な気品あふれる妻に変身したカタリーナとペトルーチオのデュエットの後、登場人物たちが皆座ってお茶を飲むしぐさをするのが何ともお茶目で和んだ。こんな結末、だれも予想しなかったに違いない。

スピーディでエンターテインメント的な要素たっぷりでありながら、現代的でアーティスティックでもあるこの作品、ぜひ次の来日公演に持ってきてほしいと願っています。その前に、来シーズンのボリショイ・バレエの映画館中継でも予定されていることから、そこでまずは予習させてほしいものです。

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