アメリカン・バレエ・シアター(ABT)での昇進が、New York Timesで報じられました。
BREAKING: Misty Copeland named principal dancer at The American Ballet Theater. http://t.co/PdbD496W9Bpic.twitter.com/ePa6iIRpdw
— New York Times Arts (@nytimesarts) 2015, 6月 30
ABTの発表
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=522
大きな話題となったのが、ミスティ・コープランドのプリンシパル昇進です。TIME誌の表紙を飾り、トニー賞授賞式ではプレゼンターとして登場し、アンダー・アーマーでのCM出演など話題に事欠かなかった彼女。先日メトロポリタン・オペラハウスで「白鳥の湖」に主演した時には、チケットはソールドアウトとなりました。ABT史上初のアフリカ系アメリカ人の女性プリンシパルが誕生しました。
ミスティ出演のアンダー・アーマーのCM映像は、800万回以上の再生回数を誇っています。
ソーシャルメディアなどでの宣伝が先行している、技術的には欠点があり「白鳥の湖」での主演の時にグラン・フェッテが32回回れず途中でフェアテに変更した、など批判もある彼女ですが、バレエも多様性の時代であることを物語っています。バレエ界にとどまらない知名度を持ち、アメリカでもっとも有名なバレリーナの一人であり、ティーンエイジャーに絶大な人気を誇っているのは間違いありません。
「白鳥の湖」主演後には、ものすごい人数の若い女性ファンたちがサインを求めて出待ちをしていたことが報じられました。この舞台では、バレエ・リュス・ド・モンテカルロの元プリンシパル、レイヴン・ウィルキンソンと、ヒューストン・バレエの元プリンシパル、ローレン・アンダーソンという二人の偉大なアフリカ系アメリカ人元バレリーナが、カーテンコールでミスティに花束を贈りました。
ミスティの昇進は、米国大統領カウンシルからも祝福されました。
Congrats to Coucil Member @mistyonpointe on becoming the first Afr-Amer female principal dancer in @ABTBallet's 75-year history!
— President's Council (@FitnessGov) 2015, 6月 30
賛否はありますが、歴史的なニュースであり、New York Timesではブレイキングニュース(号外)となり、全米のテレビでも芸能ニュースで大きく報道されるほどの事件でした。ミスティがプリンシパルとなったことで、今までバレエを観なかった層が劇場に足を運ぶようになるでしょうし、それはバレエにとっては素晴らしいことです。
怪我をしたポリーナ・セミオノワの代役で先日「ジゼル」を踊って高く評価され、ABTの通なファンの間で熱狂的な人気を誇るステラ・アブレラもプリンシパルに昇進しました。2001年にソリストに昇進して以来長いこと不遇だった彼女ですが、ロイヤル・ニュージーランド・バレエで「眠れる森の美女」、オーストラリア・バレエで「ジゼル」にゲスト出演。ベテラン実力派の彼女もついに報われる時が来ました。
ダニール・シムキンのTwitterより。嬉しそうな表情と周りの団員の祝福が素敵です。
Photo: So happy for Stella Abrera (stellaabreradetsky) for being promoted to Principal as … http://t.co/XUnsMWOILlpic.twitter.com/EnirajzZpb
— Daniil Simkin (@daniil) June 30, 2015
また、ABTにもたびたびゲスト出演してきたマリア・コチェトコワがサンフランシスコ・バレエから移籍。Twitterのプロフィールで一足先に「ABTプリンシパル」とフライングしていたことから、彼女の移籍はすでに公然の噂となっていました。さらに、昨年ゲスト出演し、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するアルバン・レンドルフは、デンマーク・ロイヤル・バレエから移籍します。2人とも、元のカンパニーにも在籍し続けるとのことです。
ソリストへの昇進と移籍も発表されました。スカイラー・ブラント、ルチアーナ・パリス、トーマス・フォースター、アーロン・スコットとカサンドラ・トレナリーがソリストに昇進します。また、ボストン・バレエのプリンシパルで、先週の「スター・ガラ2014」で来日していたジェフリー・シリオもソリストとして移籍します。
ABTは、今年パロマ・ヘレーラ、シオマラ・レイエス、ジュリー・ケントと3人の女性プリンシパルが引退しました。また、ポリーナ・セミオノワ、デヴィッド・ホールバーグが怪我をし、さらにゲストですがナタリア・オシポワも怪我をしたことで主演を踊る人がいなくなってしまって、代役探しに奔走したり、実力のないダンサーに代役をさせる大変な事態になってしまいました。これらの昇進と移籍により、もう少し状況は良くなるものと思われますが、引き続き、特に春のMETシーズンは綱渡り状態が続いてしまうことでしょう。かつての栄光の日々を取り戻すのは難しそうです。