7月22日に、ボリショイ・バレエで、今シーズンの新作「現代の英雄」が初演されました。
http://www.bolshoi.ru/en/performances/813/
“Hero of Our Time” ballet successfully premiered at The Bolshoi.
Congratulations to all the participants! pic.twitter.com/0UNnhyg47I
— Большой театр (@BolshoiOfficial) 2015, 7月 23
ミハイル・レールモントフの有名な小説を原作とし、振付はかつてボリショイで活躍したダンサーで、現在はサンフランシスコ・バレエの常任振付家であるユーリ・ポソホフが振付しました。26歳という若さで決闘のために亡くなったレールモントフですが、「現代の英雄」は大変人気のある小説です。主人公ペチョーリンは、ネガティブな面もある男性ですが魅力的な人物で、エフゲニー・オネーギンと並んでロシア人にとっての永遠のヒーロー像です。
リハーサルの写真
http://www.bolshoi.ru/en/about/press/photo/hero/
この作品は、「BELA」「TAMAN」「PRINCESS MARY」の3つのパートに分かれており、それぞれ異なった年代を描いているため、主人公ペチョーリン役もパートが変わると別のダンサーが踊ることになります。
7月22日、26日
Pétchorine : Tsvirko/Ovcharenko/Skvortsov
Bela : Smirnova
Mary : Zakharova
Ondine : Shipulina
23日、25日
Pétchorine : Lobukhin/Lantratov/Lopatin
Bela : Vinogradova
Mary : Stashkevitch
Ondine : Alexandrova
24日
Pétchorine : Tsvirko/Ovcharenko/Merkuriev
Bela : Smirnova
Mary : Krysanova
Ondine : Shipulina
ボリショイのサイトでは、非常に詳しいあらすじも(英語でも)掲載されています。
http://www.bolshoi.ru/en/performances/813/libretto/
ボリショイ劇場のマガジンには、リハーサルの写真と、ポソホフのインタビューが載っています。原作のある物語バレエではあるのですが、物語を忠実にバレエ化するのではなく、バレエを作り上げるために原作をもとにしたパズルを作ったとのこと。それぞれのエピソードで呼び起される感情を、感情的、歴史的、文化的な様相から描きたかったそうです。
またポソホフによれば、芸術監督のセルゲイ・フィーリンが、振付家ポソホフと、演出家のキリル・セレブレニコフ(舞台の演出や映画監督としても著名ですがバレエを手掛けるのは初めて)が協力して新しいバレエ作品を創ることを提案し、セブレニコフが、「現代の英雄」のバレエ化が良いと答えたそうです。ポソホフ自身は、「エフゲニー・オネーギン」か「戦争と平和」のバレエを作りたかったそうです。
なお、キリル・セレブレニコフは、今月開催されているアヴィニョン演劇祭で、ラース・フォン・トリアーの映画「イディオッツ」の舞台化を行っています。先月、彼のプロダクションのうち7作品はポルノなのではないかと捜査の手が入り、さらにロシアの文化相も彼の古典作品の舞台化は不適切ではないかと批判したなど、議論を呼ぶ演出家のようです。
こちらにもポソホフのインタビュー記事が(英語)
http://rbth.com/arts/2015/07/21/yuri_possokhov_bolshoi_ballet_can_produce_new_generation_of_choreographe_47927.html
リハーサル映像
ゲネプロの映像
http://www.ntv.ru/novosti/1446699/
映像にもある傷痍軍人は、実際に車いすに乗っている3人の車いすダンサー("Russian National Wheelchair Dance Sport team members)が演じているとのことです。
こちらは初日の映像
http://tvkultura.ru/article/show/article_id/137962
カーテンコールの写真は、ダンソマニのフォーラムにアップされています。
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?t=7138&sid=982b6db699fa9107c8442c8986feb93a
32歳という若い作曲家Ilya Demutsky に作曲を依頼したこの作品、オペラ的な歌声なども使った音楽も特徴的だったようです。かなり大胆な演出もあったようで今までになかったような作品だったとのことですが、批評家の評判は良いようです。また、怪我で長いこと舞台を遠ざかっていたオルガ・スミルノワがこの作品で無事復帰を果たしました。
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