連休で京都、大阪に行ってきて、京都国際マンガミュージアムで「バレエ・マンガ 永遠なる美しさ」展を見てきました。
http://www.kyotomm.jp/event/exh/ballet2013.php
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京都国際マンガミュージアム自体、行くのは初めてだったのですが、その充実ぶりに驚きました。元は小学校だった建物を改装してミュージアムにしたもので、1970年代から現在(2005年)まで発行されたものを中心とするマンガ単行本約5万冊が「マンガの壁」として収蔵されていて自由に読むことができます(バレエマンガもたくさんあります)。また、世界各国のマンガがあったり、マンガの歴史などをたどる「マンガって何?」って展示があったりして、マンガの発展の歴史を学ぶことができます。
「百人の舞妓展」という、有名マンガ家が描いた舞妓さんの絵が展示してあり、さらには、似顔絵を描いてくれるコーナー、紙芝居を上演してくれるところもあったりして、ここにいれば一日楽しむことができる感じでした。外国人の来館者も多く、紙芝居の弁士さんは英語も話し、英語字幕までついていて素晴らしい、って思いました。バレエマンガ展の他に、「凛々しく可愛らしく」という展覧会もやっていて、竹宮恵子、ちばてつや、藤井千秋、花村えい子の精巧な複製原画・原画'(ダッシュ)が展示されていました。
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また、ちょうどコスプレのイベントが行われていたので、多くのコスプレイヤーさんの姿を見ることができたのも、とても不思議で楽しい経験でした。
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さて、バレエ・マンガ展です。基本的には、以前このブログで紹介した図録の内容を踏襲する感じですが、バレエがまず日本に入ってきた経緯を説明するために、薄井憲二コレクションから、貴重な所蔵品を借りてきていました。バレエ・リュス関連の資料を始め、ニコライ・レガートが描いたバレリーナや振付家たちの風刺画がたくさん展示してあり、また東勇作さんが出演したバレエ公演のパンフレットなどもありました。
高橋真琴さんの「のろわれたコッペリア」は、コピーですが読むことができて、有名なトウシューズに画鋲の初登場の場面もありました。高橋真琴さんは、今はマンガを描かなくなって、イラストレーター専業になったとのことですが、彼の描いた原画は実に華麗で、うっとりとさせられます。また、かつては学年誌にバレエ・マンガが連載されてきたことで、日本にバレエが根付いてきたのかな、と感じました。
(真っ赤なポワントに画鋲たくさん、というオブジェも飾られていました)
色々な有名作家さんの原画が展示してあって、修正の跡や手書きのネームなどを見ることができたのはとても興味深かったですし、どの原画もアート作品としても非常に繊細で美しい。バレエ・マンガは、バレエとして正しい動きやポーズを描かないといけないので、相当デッサン力がないと描けないし、また写真、資料などを見て正確性を期さないといけません。バレエマンガ創成期当時は、バレエ雑誌などもなかったようですし、洋書屋などで資料を取り寄せて苦労された方が多いようです。
また、バレエ、ダンスならではの躍動感を表現するために、新しい表現手段が生まれたというのも面白いです。コマをいくつかぶち抜いて描いてみたり、画面構成を工夫してみたり。マンガという芸術自体の発展に、バレエマンガは大いに貢献しているということを感じた次第です。「バレエ」というフィジカル(=肉体的)な芸術を、平面で表現することの限界があるからこそ、表現手段に工夫が凝らされ、バレエマンガは芸術として進化してきたのだと感じました。
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最初の頃は、滝に打たれて修行するとか、いじめ、スポ根的な部分、母娘ものなどのメロドラマ要素といったウェットな要素を多く含んでいたことが多かったのですが、山岸凉子さんの出現とともに、より芸術性、精神性の高い表現へと昇華していきます。「アラベスク」、そして有吉京子さんの「SWAN」という2大金字塔には、さすがに多くのスペースが割かれていました。さらには槇村さとるさんの作品、山岸さんの近作「テレプシコーラ」と、より現代的な作品へとつながっていきます。女性の生き方としてのバレエ、ということがよりクローズアップされてきます。
少しですが、海外の作品も展示してありましたが、ほとんどはニジンスキーなどの実在のダンサーの伝記的な作品でした。
有馬龍子バレエ団/京都バレエ専門学校が提供したバレエ衣装もいくつか展示されていました。「白鳥の湖」「ジゼル」「眠れる森の美女」など。また、有馬龍子バレエ団のバレエ公演のビデオも上映されていて、カール・パケットがゲスト出演した「白鳥の湖」「眠れる森の美女」を見ることができました。
あと、大変面白かったのが、魔夜峰央さんのコーナー。奥様がバレエ教師である魔夜峰央さんは、大人になってからバレエを習い始めました。奥様とパ・ド・ドゥを踊る映像やポワントレッスンを受ける映像があって、とても微笑ましかったです。
水野英子さんがルジマトフにプレゼントした、彼の踊りを描いたイラストレーションは、ルジマトフ・ファンの皆さんには必見です。
そして、物販も充実していて、中でもポストカードの種類が多くて、すっかり散財してしまいました。
カタログが大変充実していて素晴らしいので、京都以外の方はそれを見て楽しめますが、もし京都に連休などでいかれる機会があるのなら、ぜひ足を運ぶことをおすすめします。とにかく、原画の美しさはため息ものです。
カフェテリアには、有名マンガ家さんによる落書きもたくさんありました。
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2013年7月13日(土)~9月23日(月・祝)
◇午前10時~午後6時(最終入館は午後5時30分)
◇休館日:水曜
会場 京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー1・2・3
料金 無料 ※ミュージアムへの入場料(800円)は別途必要です
主催 京都精華大学国際マンガ研究センター、 京都国際マンガミュージアム
協力 兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクション
一般社団法人 有馬龍子バレエ団/京都バレエ専門学校
制作 バレエ・マンガ研究会
全体監修:ヤマダトモコ(マンガ研究家)、バレエ監修:芳賀直子(舞踊研究家)
調査・資料協力:小西優里、卯月もよ(図書の家)
調査・執筆:岩下朋世(相模女子大学メディア情報学科講師) 、倉持佳代子(京都国際マンガミュージアム研究員)
現実的?「バレエ漫画」に少女たちが夢中になった理由
http://dot.asahi.com/aera/2013091300034.html
バレエ漫画の系譜に迫る
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130902-OYT8T00463.htm