1985年にオープンした青山劇場と、青山円形劇場が、青山こどもの城の閉館に伴い、こちらも閉館することになり、29日、30日には最終公演「青山バレエフェスティバル―ラスト・ショー」が開催されました。
http://www.aoyama.org/topics/2014/abf.html
青山劇場:最後のバレエフェスティバル 30日まで
http://mainichi.jp/select/news/20150130k0000m040048000c.html
残念ながらこちらの公演は観に行けなかったのですが、長く親しまれた劇場が閉館することは本当に残念に思います。「ローザンヌ・ガラ」「マシュー・ボーンの白鳥の湖」のほか、劇団新感線やミュージカル「オケピ!」そして遊・機械/全自動シアターなどの演劇上演を観に行ったことを思い出します。ローザンヌ国際バレエコンクールも、かつてここで開催されたことがありました。
青山劇場が閉館 あの俳優も疑問の声
http://dot.asahi.com/aera/2015012800101.html
ミュージカル公演が定着したのには、「東洋一」とうたわれた舞台装置がある。全床スライド式の2面の主舞台を持ち、主舞台そのものが入れ替わる大胆な舞台転換ができる。さらに大迫り(迫りとは床をくり抜き昇降装置を施した舞台機構)の上に、24基の小迫りが乗る。意表をつくスペクタクルな演出が可能だ。両劇場プロデューサーの一人、志茂聰明さんは言う。
「東洋どころかブロードウェーにも、世界のどこにもない大がかりで贅沢な舞台装置。日本では二度と作れないでしょう」(AERA 2015年2月2日号の記事より)
厚労省は理由の一つに「老朽化」を挙げていますが、築30年というのは決して古くはありません。実際にはもっと古い劇場はたくさんあります。「こどもの城」厚生労働省内事業仕分け資料(2010年10月)で「建物はまだ十分使用に耐えられることが確認されている」と明記されています。
http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/19-1f.pdf
(さよなら「こどもの城」:上)子も親も、笑顔になれた
http://www.asahi.com/articles/DA3S11565228.html
閉館の発表は12年9月。厚労省は理由の一つに施設の老朽化を挙げる。特に空調や電源設備が深刻といい、耐震補強など施設全体の改修に120億円が必要だと試算する。様々なタイプの民間テーマパークができるなど遊び場が多様化したことや、自治体で児童館の整備が進んできたことも閉館の理由だと説明する。様々なタイプの民間テーマパークができるなど遊び場が多様化したことや、自治体で児童館の整備が進んできたことも閉館の理由だと説明する。
唯一の国立の児童館だった「こどもの城」。劇場やホテルの宿泊者も含めた利用者は30年間で計2800万人超。2013年度は約80万人が訪れましたた。こどもの城は国立の児童館として約3500の遊びのプログラムを提供、各地の児童館や保育所などに発信しており、その代替する役割を担う施設はありません。
「こどもの城、青山劇場、青山円形劇場の存続を願う有志の会」という会が設立され、署名活動を行うとともに、国会での勉強会、請願などで各方面に働きかけてきました。また、演劇人など多くの著名人も、閉館に反対することを表明してきていました。
こどもの城、青山劇場、青山円形劇場、残して!
http://kodomonosiro.blog.fc2.com/
厚労省によると、閉館後については「未定」。まず人が入れないようにするために建物を覆う塀の設置などに3億円費やすという。(上記AERAの記事より)
というわけで、建物自体はすぐに取り壊しをされるわけではないようですが、「人が入れないようにするために建物を覆う兵の設置などに3億円を費やす」というのは、穏やかではありません。
これはあくまでも噂ではありますが、一等地にあり、裏にも広い空地があることから、オリンピック関連施設ができるのではないかという説もあります。
さよならジャニーズ殿堂 青山劇場閉館
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015013002000235.html (東京新聞)
さて、青山劇場は、ミュージカルの他、バレエ公演も多く行われてきた劇場でした。
青山劇場、日本青年館…消えるバレエの拠点 老朽化で相次ぎ閉館
http://www.sankei.com/entertainments/news/150118/ent1501180013-n1.html
3月末に日本青年館(新宿区)、9月末には、ゆうぽうとホール(品川区)と渋谷公会堂(渋谷区)がそれぞれ老朽化のため、閉館する予定とのことです。特に、ゆうぽうとホールは年間約150日もバレエ公演に利用される“バレエの一大拠点”として知られています。
ゆうぽうとでは、マニュエル・ルグリのガラなど、数々の名公演が行われてきて、思い出深い会場です。また、バレエの発表会などにも多く使われてきました。建物は古いものの、非常に見やすく、劇場の大きさもちょうどよくて、一番安い席でも舞台からの距離が近いので嬉しいところでした。閉館は本当に悲しいです。
上記産経新聞の記事によれば、東京文化会館は2020年の東京五輪・パラリンピック前に再改修が検討されているそうです。そうすると、ますますバレエ公演の会場が足りなくなります。去年も、約半年間、東京文化会館の改装工事がありましたが、その間、あまり見やすくないオーチャードホールやNHKホールに公演が移ってしまって、やむを得ないこととはいえ、ちょっと不満を感じてしまっていました。
危機感を共有する東京のバレエ団を中心に、昨年9月に発足した日本バレエ団連盟は「文化の祭典でもある東京五輪を前に、世界共通の芸術、オペラとバレエの劇場は不可欠。観光資源にもなる」と、活動環境の厳しさを訴えるとともに、国や都に品川周辺への劇場建設を働き掛けている。(産経新聞)
東京の劇場不足深刻化 「バレエ団連盟」が発足 五輪見据え「文化の器」建設求める
http://mainichi.jp/shimen/news/20141020dde012040003000c.html
日本では、新国立劇場バレエ団とNoismは例外として、日本のバレエカンパニーは専属の劇場を持っていませんでした。貸し劇場でバレエ公演が行われてきたということは、来日公演も組み込みやすいし、プロからアマチュアまで、様々な団体が公演を行いやすいという面がありました。
反面、決まった劇場がないというのは、ダンサーの立場からすれば決して良いことではありません。それに加えて、バレエ公演を行ってきた劇場が次々と閉館していっては、踊る場所がなくなってしまうということにもなりますので、ますますバレエ公演を行う環境が悪くなるということです。発表会を行うバレエ教室にしても、会場を押さえるのが難しくなるので、すそ野を広げるのも難しくなります。
打開策として、上記「日本バレエ団連盟」の発足があったということです。真に文化としてバレエ/ダンスが定着するためには、新しい劇場ができればありがたいのですが。欧米のように、劇場が都市の観光資源となったり、広く文化を定着させるための場としての機能をもっと強化させることができたら良いのですが、なかなか道は険しそうです。新国立劇場がもっと外部利用しやすくなれば良いのですが、それもなかなか難しいようです。
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