シルヴィ・ギエムのさよならツアーLife in Progressで、彼女が踊ったマッツ・エック振付「Bye」に涙した方は多かったと思います。
数々の傑作を生みだしてきたマッツ・エック。そのエックが、70歳になったのを機に、振付家としての活動に終止符を打ち、それと同時に彼のすべての作品の上演権を各カンパニーから引き揚げ、封印することも宣言しました。この決断は2年前に下したそうです。
フィガロ紙の記事(フランス語)
http://www.lefigaro.fr/musique/2016/01/05/03006-20160105ARTFIG00175-mats-ek-le-choc-des-adieux.php
パリ・マッチの記事(フランス語)フィリップ・ノワゼット氏によるインタビュー。
http://www.parismatch.com/Culture/Spectacles/Chroregraphie-La-derniere-danse-de-Mats-Ek-890115
インタビューにはバイクに乗って颯爽と現れるなど若々しいエックですが、「50年間も踊ってきて、周りに引退しろと言われる前に辞めることを決断した。人生は作品よりも長い」と語っていました。
エックは、「From Black to Blue」と題したツアーをパリのシャンゼリゼ劇場で1月6日よりスタートさせました。「She Was Black」はドレスデン・バレエによって、「Solo for Two」はリヨン・オペラ座バレエのDorothée Delabieと、スウェーデン王立バレエのOscar Salomonssonによって踊られます(シルヴィ・ギエムのために振付けられた「スモーク」のリメイク)。そして新作「Axe」は彼の長年のミューズ、アナ・ラグーナと Yvan Auzelyが踊ります。60代のダンサーふたりによる、自分自身の中に閉ざされ、相手に心を閉ざしたカップルを描いた愛と哀しみに満ちた作品だそうです。
作品を封印する理由として、エックは自分が完璧主義者なので、自分が振付指導にかかわっていない形での上演は認められられない、と語っています。今回のツアーは、「ジゼル」など一つの代表作を上演するのではなく、様々な年代に初演された作品を上演し、最後に、新作で締めくくりたい、それも30年間彼にインスピレーションを与えつづけたダンサーたちによる上演で、とのことです。
自分が振付指導にかかわっていない作品の上演を許したくないという振付家の気持ちはわかりますが、彼の素晴らしい作品が観られなくなるのは本当に残念です。上記インタビュアーも語っていますが、ダンス界にとっては大きな損失です。
東京バレエ団とシルヴィ・ギエムによる「カルメン」、ギエムの「Bye」、オペラ座の「アパルトマン」、昨年の横浜バレエフェスティバルで一部上演された「眠れる森の美女」など、実際にライブで観られた作品は少なかったのですが、貴重な体験でした。
エックの作品はいくつかDVD化されているので、これらを通して彼の世界に触れるしかなくなります。
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追記:
スウェーデン王立バレエの児玉北斗さんに教えていただいたことによりますと、まだ作品上演の契約が残っている作品については、すぐに封印されるわけではないとのことです。
スウェーデン王立バレエでは、木田真理子さんにブノワ賞をもたらした「ジュリエットとロミオ」を、3月にストックホルムで、6月にワシントンDCとオレンジカウンティで上演するとのことです。
ケネディセンターでの上演
http://www.kennedy-center.org/calendar/event/BQBSH