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オールスター・ガラにロパートキナ出演決定、NYでのマリインスキー公演出演予定

マリインスキー・バレエの来日公演も終わってしまいましたね。連日通っていて、なかなか感想をアップする時間がなかったのですが、これからやっと書いて行こうと思っています。

ロパートキナの至高の「白鳥の湖」、そしてマリインスキー以外で初めての上演となった「愛の伝説」、シャプランのフレッシュな魅力が全開だった「ロミオとジュリエット」、美しい「ジュエルズ」など、本当に素晴らしい舞台に出会えました。

そのマリインスキー・バレエの会場で、来年7月に開催される「オールスター・ガラ」の追加出演者が発表されていました。(まだ公式サイトには情報なし出演情報出ました。)

公式サイトには、出演者は

【出演予定ダンサー】
ニーナ・アナニアシヴィリ
アレッサンドラ・フェリ
スヴェトラーナ・ザハーロワ
マルセロ・ゴメス

となっていますが、チラシでは、エルマン・コルネホの名前もあります。そして、会場では、ボリショイ・バレエのミハイル・ロブーヒン、そして12月6日にはウリヤーナ・ロパートキナの名前も発表されていました。ロパートキナが出演するとあれば、これは見逃せませんね。
http://www.japanarts.co.jp/blog/blog.php?id=1699


********
なお、マリインスキー・バレエは来年2月に、ワシントンDCのケネディセンターで「ライモンダ」を上演します。

そしてほぼ同時期にニューヨークのブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)にて「マイヤ・プリセツカヤへのオマージュ」と題した公演を行います。ロパートキナ、ヴィシニョーワの2大プリマが出演し、音楽監督はワレリー・ゲルギエフ

The Mariinsky at BAM
http://www.bam.org/dance/2016/mariinsky-residency

A Tribute to Maya Plisetskaya: Program A 2月25日

ロパートキナ、ヴィシニョーワ出演
プリセツカヤの「ボレロ」映像上映、音楽はマリインスキー管弦楽団の演奏
「Woman in a Room」カロリン・カールソン振付、ディアナ・ヴィシニョーワ
「瀕死の白鳥」 ウリヤーナ・ロパートキナ

A Tribute to Maya Plisetskaya: Program B 2月26日

ロパートキナ、シクリャーロフ、エルマコフ他マリインスキー・バレエのソリストが出演

「くるみ割り人形」からトレパック
「瀕死の白鳥」
「薔薇の精」
「シェヘラザード」抜粋
「ショピニアーナ」抜粋
「ペトルーシュカ」抜粋
「眠れる森の美女」抜粋
「ジゼル」抜粋


A Tribute to Maya Plisetskaya: Program C 2月27日

ディアナ・ヴィシニョーワ出演
詳細未定


A Tribute to Maya Plisetskaya: Program D 2月28日

ロパートキナ、シクリャーロフ、エルマコフ他マリインスキー・バレエのソリストが出演

「瀕死の白鳥」
「薔薇の死」 (ローラン・プティ振付)
「メロディ」 (アサフ・メッセレル振付)
「ショピニアーナ」抜粋
「カルメン組曲」抜粋 (アルベルト・アロンソ振付)
「バフチサライの泉」抜粋 (ロスティスラフ・ザハーロフ振付)
「アンナ・カレーニナ」抜粋 (アレクセイ・ラトマンスキー振付)
「ロミオとジュリエット」抜粋 (レオニード・ラヴロフスキー振付)
「白鳥の湖」抜粋
「イワンと仔馬」抜粋 (アレクセイ・ラトマンスキー振付)


これらのプログラムのうち、どれをロパートキナが踊るかははっきりはしていませんが、かなりの部分を踊ってくれることが期待されます。


元ロイヤル・バレエのプリンシパル、ブリオニー・ブラインド逝去

1978年から91年までロイヤル・バレエに在籍し、84年に若くしてプリンシパルに昇格、ルドルフ・ヌレエフのパートナーも務めたブリオニー・ブラインドが亡くなりました。心臓病で、55歳という若さでした。

Bryony Brind: A look back at her life with The Royal Ballet
http://www.roh.org.uk/news/bryony-brind-a-look-back-at-her-life-with-the-royal-ballet

Former Royal Ballet principal Bryony Brind dies at 55
http://www.bbc.com/news/entertainment-arts-35049787

Bryony Brind, ballet dancer - obituary
http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/12041904/Bryony-Brind-ballet-dancer-obituary.html

1977年にローザンヌ国際コンクールでスカラシップを獲得し、翌年ロイヤル・バレエに入団したブリオニー。まだ、コール・ド・バレエの時に、アシュトンの「ラプソディ」の初演キャストとなり、「白鳥の湖」のオデット/オディールも踊りました。この「白鳥の湖」の踊りが高く評価されました。81年にローレンス・オリヴィエ賞を受賞。81/2シーズンには、ヌレエフ相手に「ラ・バヤデール」のニキヤ役を踊ります。84/5シーズンにプリンシパルに昇格してからは、古典全幕の他、バランシンの「放蕩息子」のセイレーヌなども踊り、ジョナサン・コープ、ウェイン・イーグリング、アシュレー・ページなどとも踊りました。1991年にカンパニーを退団し、フリーのダンサー、そして女優となります。

日本では、カンパニーの1987年の来日公演で「眠れる森の美女」のオーロラとリラを踊っている記録が残っています。ほっそりとして脚の長い体型の持ち主だったため、振付家に好まれ、現代作品にもたくさん出演しました。

キャリアの初期はヌレエフに抜擢されるなど華やかでしたが、少し下にアレッサンドラ・フェリがいて、マクミランはブリオニーをあまり起用せずフェリを重用したため、キャリアに恵まれなかったところがあって、まだ若い年齢でカンパニーを去ることになりました。一方で、ダニエル・デイ=ルイス、英王室のマイケル・オブ・ケント王子(エリザベス女王の従兄弟)などとの華やかな交際でも知られており、有名な作家バーバラ・カートランドの息子と結婚しました。ロイヤルを退団した後、いくつかの映画に出演し、またバレエ関連のイベントの司会なども行っていました。

テレビ放映された「ローザンヌ国際コンクール25周年記念ガラ」には彼女がハインツ・シュペルリの「ファンタジー」を踊る映像も収録されています。ナショナル・ポートレート・ギャラリーには、彼女の肖像画も飾られています。

最近では、ロイヤル・バレエのダンサーの大部分が外国人となり、プリンシパルに至っては女性1人、男性2人のみが英国人であるという現状を問題視する彼女の発言が新聞に掲載されました。
http://www.telegraph.co.uk/culture/theatre/dance/10054812/Bryony-Brind-foreign-ballet-dancers-risk-loss-of-British-quirks.html

55歳で亡くなってしまうのは、あまりにも若い死といえます。ご冥福をお祈りいたします。

ロイヤル・バレエのリカルド・セルヴェラ、引退

ロイヤル・バレエのファースト・ソリストとして活躍してきた、リカルド・セルヴェラが引退することが発表されました。

12月12日の「くるみ割り人形」のハンス・ピーター役が、彼の最後の舞台となります。

http://www.roh.org.uk/news/ricardo-cervera-to-retire-as-a-dancer-from-the-royal-ballet

スペイン生まれのリカルドは、ロイヤルバレエスクールを経て1993年にロイヤル・バレエに入団。古典の他アシュトン、マクミランのレパートリーを得意としましたが、ウェイン・マクレガー、クリストファー・ウィールドン、リアム・スカーレットといった現代作品の振付家の作品にも多く出演しています。

1999年にソリスト、2002年にファースト・ソリストに昇進し、「ラ・フィユ・マル・ガルデ」のコーラス役などの主役も踊ってきて軽やかで素晴らしいテクニックと表現力を見せてくれましたが、身長の低さが災いして実力があるにもかかわらずプリンシパルには昇進できませんでした。しかし、来日公演での「ラ・フィユ・マル・ガルデ」主演、「マイヤリング」のブラットフィッシュ役、DVDにもなっている「くるみ割り人形」(吉田都主演)のハンス・ピーター役、さらに「ロイヤル・エレガンスの夕べ」では中心メンバーの一人として、様々な作品で日本の観客も楽しませてくれました。

2014年にリカルドはロイヤル・バレエのアシスタント・バレエ・マスターに就任しました。アシュトン財団のメンターシステムでアシュトンのレパートリーの振付指導者としての教育も受けています。

芸術監督のケヴィン・オヘアは以下のように語っています。「リカルドは20年以上にわたってカンパニーの素晴らしい一員であり、「ロミオとジュリエット」のマキューシオ役や「マノン」のレスコー役でのドラマ性、「ラ・フィユ・マル・ガルデ」のコーラス役や「くるみ割り人形」のハンス・ピーター役でのはちきれんばかりの魅力まで、様々な役柄において、特に優れたパフォーマンスを見せてくれました。彼はDVD化された「くるみ割り人形」のハンス・ピーター役でフィーチャーされているため、この役が彼の最後の舞台となるのはふさわしいと思います。今後は、彼はロイヤル・バレエの芸術スタッフとして、引き続き私たちと一緒に仕事をしていきます」

日本のファンにも愛されたリカルドの、来年のロイヤル・バレエの来日公演で踊る姿が観られなさそうなのは残念ですが、引き続きロイヤルの教師として活躍してくれるのは救いです。彼の魅力的な踊りが、多くの後進に引き継がれますように。

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英国ロイヤル・バレエ団 「くるみ割り人形」(全2幕 ライト版) [DVD]
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『芸能人が本気バレエ! 密着200日SP』

昨日TBSで放映された『芸能人が本気バレエ! 密着200日SP』皆さんご覧になりましたか?

バレエ経験のある女性芸能人が、K-Balletの白鳥の湖のビッグスワンに挑戦するという企画です。ローザンヌ国際コンクールに出場した八反安未果さんや、松岡伶子バレエ団出身のモデルのえれなさん、大学でバレエを専攻する学生など様々でした。20人から10人に絞り込まれ、200人の猛特訓の上二人がビッグスワン、二人がコール・ド・バレエを踊るというものでしたが、汗あり涙あり、荒井祐子さんや前田真由子さんの猛特訓で、みなさんみるみる上手になっていって見応えあり感動的でしたね。


関西や中部の地域では放送がなかったようですが、公式のYouTubeでアップされてました。

見逃した方は是非ご覧ください。バレエの厳しさとそれゆえの美しさが伝わってきました。

https://www.youtube.com/watch?v=XiF_Jb8QO0w

「Ballet Princess バレエ・プリンセス〜バレエの世界のお姫様たち〜」公演(3/31)

豪華キャストがお贈りする一夜限りの特別公演「Ballet Princess バレエ・プリンセス〜バレエの世界のお姫様たち〜」が、2016年3月31日(木) 開場17:45/開演18:30 新宿文化センター 大ホールにて開催されます。

http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/princess/index.html

「バレエ・プリンセス」は、白雪姫、シンデレラ、そしてオーロラ姫という“バレエの世界のお姫様たち”が登場する三つの作品(三大プリンセス物語)で構成された公演です。

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さらに「くるみ割り人形」のクララのような役割の少女アンが登場。大きくなったらお姫さまになることを夢みるバレエが大好きな少女アンがいつしか憧れのお姫さまたちの世界を巡っていきます。メルヘンにファンタジーの要素も加わり、ハイライト公演がひとつの新たなストーリー作品のようにも楽しめるプレミアムな公演です。

出演は、オーロラ姫に米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)、白雪姫に木村優里(新国立劇場バレエ団ソリスト)、シンデレラに池田理沙子(バレエスタジオDUO)。また「眠れる森の美女」のブルーバード役で二山治雄が出演します。フロリナ姫は、今年のローザンヌ国際コンクールに出場した五十嵐愛梨。このほかにもリラの精役で新国立劇場バレエ団の長田佳世や、高岸直樹など、多くのトップダンサーや、国内外でのコンクール入賞歴を誇るホープたちが出演します。

演出・振付を手掛けるのは、第46回(2014年度)舞踊批評家協会新人賞を受賞した伊藤範子(新国立劇場オペラ他で数々のオペラの振付を務める他、近年では、自ら演出・振付を手掛けるバレエ作品「道化師〜パリアッチ〜」(谷桃子バレエ団)、「ホフマンの恋」(世田谷クラシックバレエ連盟)等を発表)。

また、本公演の開催趣旨に賛同した少女漫画界の巨匠萩尾望都が本作のために宣伝画を描き下ろし。バレエファンはもちろんのこと、大人から子供までバレエをはじめて観る方にも楽しめる舞台となることでしょう。

なお、チャコットでこの公演のチケットが先行で発売中です。良いお席をお求めされたい方は、ぜひこちらでどうぞ。
https://chacott001.stores.jp/

出演(予定):

オーロラ姫(眠れる森の美女):米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
白雪姫:木村優里(新国立劇場バレエ団ソリスト)
シンデレラ:池田理沙子(バレエスタジオDUO)


王子(シンデレラ):橋本直樹
王子(眠れる森の美女):浅田良和

リラの精(眠れる森の美女):長田佳世(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

ヴィラン:高岸直樹

義姉(シンデレラ):樋口みのり(谷桃子バレエ団) / 義姉(シンデレラ):樋口ゆり  
宝石(眠れる森の美女):副智美 / 宝石(眠れる森の美女):田中絵美(谷桃子バレエ団)
白い猫(眠れる森の美女):松本佳織(東京シティ・バレエ団) / 赤ずきん(眠れる森の美女):塩谷綾菜(アートバレエ難波津)
フロリナ姫(眠れる森の美女):五十嵐愛梨(山本禮子バレエ団)


宝石(眠れる森の美女):西野隼人 / 狼(眠れる森の美女):小山憲(バレエスタジオHORIUCHI)
長靴をはいた猫(眠れる森の美女):荒井成也(井上バレエ団)
道化(シンデレラ):田村幸弘(バレエスタジオDUO)
ブルーバード(眠れる森の美女):二山治雄(白鳥バレエ学園)


客人(シンデレラ)・マズルカ(眠れる森の美女):
折原由季 / 兼元佑季 / 小泉奈々 / 澤田夏 / 塩山紗也加 / 田所鮎美 / 塚田七海 / 丸澤芙由子 / 山田優帆 * 谷口真幸 / 望月寛斗 / 鳥海創 / 昂師吏功 (女性五十音順*男性)


少女アン・アンの友だち・7人の小人(白雪姫)・時計の精(シンデレラ):
石川日南梨 / 大谷莉々 / 大脇里緒 / 木村香蓮 / 熊﨑苺花 / 小林咲穂 / 鈴木沙彩 / 高野結 / 戸野塚結奈 / 長渡もか / 村上夏音 / 山下沙羅 * 井嶋奏太 / 加藤航世 (女子*男子各五十音順)


<公演日時>2016年3月31日(木) 開場17:45/開演18:30 <会場>新宿文化センター 大ホール

チャコットでのチケット先行販売:
 2015年12月17日(木)〜2016年1月5日(火)17:00
https://chacott001.stores.jp/

チケット:S席8,600円/A席6,900円/B席5,400円(税込)

チケット一般発売: 2016年1月23日(土)10:00より
チケット発売所 : e+(イープラス) http://eplus.jp/
チケットぴあ 0570-02-9999 < Pコード: 448-646 >、http://pia.jp/t/
ローソンチケット 0570-000-407 (オペレーター)、0570-084-003 < Lコード: 35997 >、http://l-tike.com/
お問い合わせ  : サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (10:00〜18:00)

主催・企画制作:チャコット株式会社   協力:株式会社ビデオ

NHK Eテレ「スーパープレゼンテーション」にウェイン・マクレガー登場、吉田都さんも

世界が注目するアメリカのプレゼンイベント「TEDカンファレンス」を放送している、NHK Eテレ「スーパープレゼンテーション」。

来年1月27日(水)の放映では、ロイヤル・バレエの常任振付家として活躍する、ウェイン・マクレガーが登場します。

1月27日(水)ウェイン・マクレガー 22:25-22:50
「ダンス 振り付け師が明かす創作の秘密」
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/topics/151216.html

英国ロイヤルバレエ団の振り付け師ウェイン・マクレガーによる異色のプレゼンテーションを紹介。マクレガーはTEDのステージ上でダンサーとコミュニケーションを取りながら即興の振りを付け、作品を作り上げていく。振りとは“身体的思考”だと語るマクレガー。その言葉に込められた意味とは?かつてロイヤルバレエ団でプリンシパルとして活躍したバレリーナ・吉田都のインタビューを交え、身体による表現の奥深い魅力を伝える。

ウェイン・マクレガー: 「ダンス創作プロセスの実演」

日常的に身体を使っていても、ウェイン・マクレガーのように 「身体の持つ可能性」 を考えられる人は、案外少ないものです。
2人のダンサーと共に 即興でダンスのフレーズを創り上げながら、振り付け師がどの様なプロセスで観客にアイ­ディアを伝えるのか、実演を交えながら紹介します。

マクレガーのプレゼンテーションは、上のYouTubeの動画で字幕付きで観ることができますが、吉田都さんがどのような話をしてくれるのかが、とても興味深いところですね。

12/17 シルヴィ・ギエム「ライフ・イン・プログレス」

シルヴィ・ギエム「ライフ・イン・プログレス」

http://www.nbs.or.jp/stages/2015/guillem/

ついに迎えてしまったシルヴィ・ギエムのフェアウェル・ツアー。12月30日のファイナル公演もあるとはいえ、この公演こそが、彼女の伝えたかったものなのだろうなと感じながらの鑑賞となった。引退ツアーであるにもかかわらず、ここで彼女が踊る3作品のうち2つは新作。最後の最後まで前に進んでいき、新しいものを貪欲に吸収して最高のものを見せてくれた、彼女らしいプログラム。彼女の存在が無ければ、新作の現代作品中心の公演が日本で5回分、完全にソールドアウトとなることもなかっただろう。彼女のおかげでこのプログラムを観ることができたことにも、感謝したい。

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- 東京バレエ団初演 -
イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド
振付:ウィリアム・フォーサイス 音楽:トム・ウィレムス(レスリー・スタックとの共同制作)
演出・照明・衣裳:ウィリアム・フォーサイス 振付指導:キャサリン・ベネッツ

川島麻実子 渡辺理恵 秋元康臣
河合眞理 崔 美実 高橋慈生 伝田陽美 松野乃知 吉川留衣

ギエムの印象の強いこの作品を、東京バレエ団が初めて踊った。なんといっても目を引きつけられたのは、今シーズン入団した秋元さん。古典が上手い人なのはわかっていたけど、このような作品でも、カリスマ性と大胆な動きができて、非常にスタイリッシュ。日本人男性らしからぬ、マスキュランな魅力があった。川島さん、渡辺さんはじめ、みなさんテクニックがあって美しいダンサーばかりだし、正確に踊っているのだけど、フォーサイス特有の粘り気、少し外した音取りや大胆さがもう少しあると、もっとそれらしく見えると感じた。


ドリーム・タイム
振付・演出 :イリ・キリアン 振付助手:エルケ・シェパース 音楽:武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)
装置デザイン:ジョン・F. マクファーレン 衣裳デザイン:ジョン・F. マクファーレン
照明デザイン:イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作) 技術監督、装置・照明改訂:ケース・チェッベス

吉岡美佳 乾 友子 小川ふみ
木村和夫 梅澤紘貴

この作品を観るのは初めてだけど、神事が行われそうな舞台美術も、作品自体も東洋的で美しく、このバレエ団にはよく合っている作品だと感じた。木村、吉岡のベテランペアは、スピリチュアルな世界を表現しているのに適していて眼福。トリオでの踊りを効果的に取り入れていて、厳かで神秘的な雰囲気に包まれた。ラストの、木村さん、梅澤さんが吉岡さんをリフトするところは、緊張感が漂うけど効果的なエンディング。


テクネ
振付:アクラム・カーン
音楽:アリーズ・スルイター(マッシュルーム・ミュージック・パブリッシング/BMGクリサリス、
プラサップ・ラーマチャンドラ、グレイス・サヴェージとの共同制作)
照明デザイン:アダム・カレー、ルーシー・カーター 衣裳デザイン: 中野希美江 リハーサル・ディレクター:ホセ・アグード

シルヴィ・ギエム
パーカッション:プラサップ・ラーマチャンドラ ビートボックス:グレイス・サヴェージ ヴァイオリン、ヴォイス、ラップトップ:アリーズ・スルイター

ここからギエム登場。舞台の真ん中には、銀色の木のような構造物があり、3人のミュージシャンも舞台の後方に。始まりは照明が非常に暗くて、地を這うような動きのギエム。短めの髪のウィッグをかぶってミニ丈のドレスを着ていると、より若く見えて少女のよう。やがて立ち上がったギエムは、木の周りをぐるぐるとシェネしたりいろいろな回転技を見せ、そして自分を解き放つように脚を鋭く振り上げたりする。生の声(ビートボックスと歌声)が響き、内省的でひそやかな小宇宙が展開するなかで、ざわめきのように踊りが響く。ここでもギエムの強靭さや完璧なフォルムが観られるのだけど、技術だけが際立つことはない。


デュオ2015
振付:ウィリアム・フォーサイス 音楽:トム・ウィレムス
照明:タニヤ・リュール ステージング:ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

後半で唯一、ギエムが踊らない作品。フォーサイスが96年に振付けた作品を、今回のツアー用に改作。フォーサイス・カンパニーに所属していた二人の男性ダンサー。はじめは無音から始まり、二人が掛け合いのように踊ったり、呼応したりしなかったり、何とも絶妙の距離感を保っている。二人とも非常にしなやかな体の持ち主で、少しゆるい感じの動きが何とも言えず心地よいけど、そう思ったら鋭い瞬間もあり、常に緊張感が漂っていて退屈することがない。そして、ほんの一瞬だけど、黒い服に髪をまとめたギエムが割って入る。


ヒア・アンド・アフター
振付・演出:ラッセル・マリファント
照明デザイン:マイケル・ハルズ 音楽:アンディ・カウトン 衣裳デザイン:スティーヴィー・スチュワート

シルヴィ・ギエム、エマヌエラ・モンタナーリ

ミラノ・スカラ座の女性ダンサー、エマヌエラ・モンタナーリとの共演。同じ衣装に身を包んだ二人は、シンクロするように同じ動きを見せたり、左右対称の動きをしたり、お互いを補完するように動く。ゆっくりと彫刻的な動きから始まるが、非常に速い音楽に合わせて踊るところもあり、同じマリファント振付の「TWO」と同様に、残像を残すような腕の動き、素早いバットマンなども。ゲーム盤のような照明のセッティングはユニークで、ゲームのキャラクターのようにも見える。二人でユニゾンの動きをすると、どうしてもギエムの方が可動域が広くて大きく踊っているのがわかってしまうところもあるが、お互いを引っ張り合ったり、背中を預け合ったり、女性同士の緊張感と同志愛のような関係性が感じられてスリリング。


バイ
振付:マッツ・エック
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ピアノソナタ第32番 Op.111 第2楽章(演奏:イーヴォ・ポゴレリチ)
装置・衣裳デザイン:カトリン・ブランストローム 照明デザイン:エリック・バーグランド 映像:エリアス・ベンクソン
共同プロデュース:ストックホルム・ダンセン・フス

シルヴィ・ギエム

前回も観たこの作品、彼女とのお別れにふさわしい一作だ。12月30日のファイナルも観に行くけど、本当は、この作品で彼女を送り出した方がいいような気がする。扉の映像の中から抜け出してきた、ちょっとあか抜けない服装のギエム。カーディガンと靴、靴下を脱ぎ棄てて、奇妙さを感じさせながらも、未だ衰えない圧倒的な身体能力で美しく伸びやかにグランジュッテしたり、軽やかにパ・ド・シャしたり、素早く回転したり、奔放で見事なんだけど、ちょっとだけ哀しげ。イーヴォ・ポゴレリチによるピアノの録音がまたこれに絶妙に寄り添っている。三点倒立も2回登場する。扉の中からは、彼女の友人や家族と思しき人々が集まってきて、少し心配げに彼女を見守る映像、やがて彼女はこの扉の中へと入っていく。最後にこちらに別れを告げるような、少し寂しげな表情でちらっと見つめながら。本当に胸を締め付けられるような瞬間だ。

今回はオーケストラが入らなかったため、オーケストラピットは板で覆われていて、ギエムはこの覆われた部分のところまで出てきてくれた。すべてをやり切ったような晴れやかな表情には、思わず涙がこぼれてしまう。今でも、ほかの誰よりも踊ることができて、誰よりも先進的でアーティスティックなのに、もう永遠に踊りを観ることができなくなってしまうなんて。でも彼女の晴れやかな表情を見ていると、新しい旅立ちもきっと素晴らしいものになるのだと感じられるし、すべてをやり切った満足感が感じられる。観客への惜しみない愛も伝わってきた。でも、これを書いている今も、思わず涙があふれてきて、寂しくて寂しくて仕方ない。ギエムの大ファンではなかった私なのに、彼女がいない世界があるなんて。本当に彼女は光だった。

もう一度、横浜での最後の公演が観られることを心の支えとしていこう。

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シルヴィ・ギエム「BYE」アジュー [DVD]
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BBCのルドルフ・ヌレエフ・ドキュメンタリー「Rudolf Nureyev - Dance to Freedom」

BBCが、ルドルフ・ヌレエフの亡命までの4か月間について再現したドキュメンタリー・ドラマ「Rudolf Nureyev - Dance to Freedom」が昨日放映されました。

http://www.bbc.co.uk/programmes/b06t3j8q

こちらの番組ですが、BBCドキュメンタリーの公式YTチャンネルで全編視聴可能です。(約90分)

1961年という冷戦時代に、キーロフ・バレエが西側へのツアー中、いかにパリでヌレエフが亡命して生きる伝説となったかを描いている再現ドラマが中心となっています。ヌレエフ役を演じているのは、ボリショイ・バレエのプリンシパル、アルチョム・オフチャレンコで、舞台やリハーサルなど踊るシーンもたくさん登場します。

このドキュメンタリーには、キーロフのツアーで彼のパートナーを務めていたアラ・オシペンコ、彼のキーロフでのライバルだったセルゲイ・ヴィクロフ、さらに彼の親しい友人だったクララ・セイント、さらに振付家のピエール・ラコットも協力しています。さらに、ソビエト時代にツアーを監視していたKGBの士官などにも取材した映像が登場します。

この番組についてのGuardian紙の記事
http://www.theguardian.com/stage/dance-blog/2015/dec/14/rudolf-nureyev-dance-to-freedom-bbc-documentary-film


11/26 マリインスキー・バレエ「ジュエルズ」

マリインスキー・バレエの日本公演、終わってからだいぶ過ぎてしまって遅くなってしまったが、一応備忘録として「ジュエルズ」から始めたいと思う。

「エメラルド」を観たときには、素敵だけどまあこんなものかな、と思っていたのだが、「ルビー」を観て凄い、と興奮し、「ダイアモンド」を観たときには、なんという美しいものを見せていただいたのだろうかと感謝の気持ちでいっぱいになった。

バランシンと言えば、もちろんNYCB(ニューヨークシティバレエ)を創設した人であり、アメリカのバレエの父である。でも、もともとバランシンはグルジア人でロシアバレエ界で活躍し、アメリカへと渡ったわけであり、彼のルーツはロシアにあるわけだ。「Bringing Balanchine Back」というNYCBのサンクトペテルブルク公演のドキュメンタリーがあって、これはまさに、バランシンを故郷に連れて帰るという意味合いがあった。「ジュエルズ」がマリインスキー・バレエで初演されたのは1999年だが、チャイコフスキーの交響曲3番を使用した「ダイアモンド」は帝政ロシアをイメージし、「白鳥の湖」を思わせるところもある作品であり、まさにマリインスキー・バレエを象徴させるような作品のように見える。

幕が開くと目に入るのは、NYCBで初演された時と同じピーター・ハーヴィーによる舞台美術と、カリンスカの衣装。まずは舞台の上に存在するものすべての華麗な美しさに息をのむ。まさに宝石箱の世界。マリインスキー歌劇場管弦楽団の演奏も見事だ。


「エメラルド」

フランスをイメージしたという「エメラルド」はフォーレのゆったりとして郷愁も感じさせる音楽がエレガント。最初のペアのセルゲーエフは先は細いけれど非常に端正でクラスノクーツカヤも上半身の動きが柔らかく優雅。シシリエンヌのブリリョーワは音楽性が豊かで動きが大きく、難しい動きもしっかりと音楽に寄り添っていた。トロワのラティポフは元気は良いのだが、丁寧さが欲しい、もう少し頑張れ、といったところ。


「ルビー」

打って変わってジャジーでモダンなストラヴィンスキーの「ルビー」。腰をひねったり突き出したり、ちょっとレビューっぽいところもあったり、なるほどアメリカ、というイメージに合う。キャスト変更で、この役を踊って全米ツアーで大人気を博したコンダウーロワが入ってくれたのが嬉しい。長身で小気味よくダイナミックでありながら、女らしくエレガントな中にセクシーなところも見せてくれるコンダウーロワ、これは評判通りのはまり役だった。メーンのカップルは、バトーエワとキミン・キム。バトーエワは溌剌としていてキュート、身体能力にも音楽性にも優れている。大きなグランバットマンもバシっと音通りに決まる。キムも、飛び跳ねるような元気さ、軽やかさがあって良かった。


「ダイヤモンド」

クラシック・バレエの美しさを凝縮した「ダイヤモンド」。最初に出てくるコール・ド・バレエを観ても、舞台の上にいるダンサーすべてがあまりにも美しいので目が眩むほど。マリインスキー・バレエならではの、プロポーションの美しさ、研ぎ澄まされていながらも柔らかいポール・ド・ブラ、しなる膝下と伸びやかなつま先。

クリスティーナ・シャプランは、清らかな透明感があって、ガラス細工のような繊細なバレリーナ。まだ恋を知らないような美少女の面差しで、長く細い四肢をしなやかに優雅に動かすと空気も一緒に動くのが感じられる。ただ同時に、神経が細いのか、慎重に踊っているのも感じられて、観る方も少し緊張しながら見守ることになった。それが彼女の独特のデリケートさにもつながっていて、魅力ともなっているし、ストーリーのない「ダイヤモンド」の中にあって、密やかなドラマ性を加えることにもなる。後半、シャプランの踊りが不安定になってピルエットの軸がずれてしまったり、ポワントが少し弱くなったように感じられたが、まだ花が開き切っていない時期の彼女を観ることができたのも幸せな経験だと感じた。大変な逸材であるのは間違いない。
アスケロフは、脚が美しいダンサーで、トゥール・ザン・レールもきちっと綺麗に5番に入り、マネージュの時のピンと伸びた脚のライン、つま先も美しい。「白鳥の湖」や「ライモンダ」を思わせる部分がある「ダイヤモンド」の中で、恭しく女性ダンサーに跪くところも様になった。

「ダイヤモンド」は群舞も加わった全員が交差するように動いてフォーメーションの変化を繰り広げていくコーダに圧倒的な至福感がある。これほどまでの法悦に包まれるクライマックスもないくらい。踊り、チャイコフスキーの音楽、舞台美術、この圧倒的な美しさの洪水の中で死んでしまったら、これもまた幸せな最期かもしれないけれど、今死んでしまったらもう素晴らしい舞台は観られないわけなので、やっぱり死なない方がいい。


≪ジュエルズ≫<全3部>


振付:ジョージ・バランシン
舞台指導:カリンフォン・アロルディンゲン、サラ・リーランド
     エリーズ・ボーン、ショーン・レイヴァリー
舞台美術:ピーター・ハーヴィー
衣装:カリンスカ
衣装復元監修:ホリー・ハインズ
初演版照明:ロナルド・ベイツ
照明:ペリー・シルヴィー
舞踊監督:ユーリー・ファテーエフ
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

<出演>
第1部≪エメラルド≫
音楽:ガブリエル・フォーレ
≪ペレアスとメリザンド≫≪シャーロック≫より

ヴィクトリア・クラスノクーツカヤ
アレクサンドル・セルゲーエフ
ヴィクトリア・ブリリョーワ  
ローマン・ベリャコフ
ナデージダ・ゴンチャール   
スヴェトラーナ・イワノワ
エルネスト・ラティポフ

第2部≪ルビー≫
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
≪ピアノとオーケストラのためのカプリッチョ≫
リュドミラ・スヴェシニコワ(ピアノ)

ナデージダ・バトーエワ
キミン・キム
エカテリーナ・コンダウーロワ
デニス・ザイネトジノフ
ワシリー・トカチェンコ
ヤロスラフ・バイボルディン
アレクセイ・ネドヴィガ

第3部≪ダイヤモンド≫
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
≪交響曲第3番≫より(第1楽章を除く)
クリスティーナ・シャプラン
ティムール・アスケロフ
エレーナ・アンドローソワ
エカテリーナ・イワンニコワ
ディアナ・スミルノワ
ズラータ・ヤリニチ
ローマン・ベリャコフ
ヤロスラフ・プシュコフ
アンドレイ・ソロヴィヨフ
アレクセイ・チュチュンニック

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12/30 シルヴィ・ギエム ファイナル

2015年12月30日(水) 神奈川県民ホール

http://www.nbs.or.jp/stages/2015/guillem_final/

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ついに迎えてしまったシルヴィ・ギエムのファイナル公演。大晦日のジルベスタ―コンサートでの最後の「ボレロ」があるとはいえ、彼女の公演としては、これが最後となった。

『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』『ドリーム・タイム』は、「ライフ・イン・プログレス」公演で同じキャストを観ている。

作品を何回も踊ることで、確実にダンサーたちの習熟度は上がっているものの、『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』は、やはりまだ大胆さが足りないように感じられた。それぞれのダンサーは大変優秀で上手いのだが、アンサンブルになると迫力が薄い。その中で、やはり異彩を放っているのが秋元さんで、音の取り方も的確だし、スピード感と不敵さもあって際立って魅力的だった。長身というわけではないのだが、腕が長くて身体に厚みがあるので、見栄えがする。

『ドリーム・タイム』は東洋的な美しさがこのバレエ団、特に吉岡さん、木村さんにはとても良くマッチしていたし、他の3人も健闘。今後カンパニーのレパートリーとして、若いダンサーたちにも踊り継いでほしい作品。

『TWO』
舞台に近い座席から観ると、闇が思ったほど漆黒ではなくて見えすぎるところがあるため、「TWO」の視覚効果もちょっと減ってしまったところがあった。少し離れて見たほうがきれいだっただろう。
初めてこの作品を踊るのを見てから時間が経っているのだが、彼女の変化というのを感じた。表現が、ナイフのような鋭さが息をひそめ、精神性の高さが伝わってきて、高速で動いている時ですら、まるで瞑想しているかのように感じられ、祈りにも似ている踊りとなっていた。もちろん身体能力の衰えは微塵も感じられないし、あの圧倒的に高い足の甲、まっすぐ天を突き刺すかのような6時のポーズも鮮烈だ。光の魔法で腕や脚の動きの残像が美しい軌跡を残す作品なのだが、今回の光の軌跡、とても儚いのだけど魂の光が浮かんでは消えていくようで、感慨深かった。

『ボレロ』
私は実は割とバレエ鑑賞歴が短くて最初にギエムのボレロを観たのってバレンボイム、CSOとの共演が初めてだと思う。2003年のこと。『ボレロ』って、シンプルに見えて、非常に難しいし奥深い作品なのだ。踊っている人の内面を恐ろしいまでに透けて見せる作品なので、いくら完璧な技術で美しく踊っても、語るべき中身のない人の『ボレロ』は恐ろしく空虚だ。それは、海外で、とある人気ダンサーの踊る『ボレロ』を見て実感した。当時のギエムも、もちろん形は美しかったけれども、心に残るものではなかった。

それから彼女の『ボレロ』はかなり変容を遂げていて、2005年の時は民衆を率いる自由の女神のような、周りを鼓舞する強いイメージだった。震災後のHOPE JAPANの時は祈りにも似た、優しくて勇気を与えてくれる踊りで、震災で傷ついた日本の人々に、私がついているから大丈夫、生きていていいのよ、希望を持っていこうというメッセージを内包していた。

今回は、もっと等身大というか、観客の方に降りてきたシルヴィだった。凄いのはもちろん凄いし、女王の風格も相変わらずなのだが、ひとりの普通の女性らしさがある。リズムのダンサー一人一人に、強い視線を送っていて、その強い視線が、そのダンサーの後ろで舞台を観ている自分にまで届いていて、メッセージを伝えようとしていたのがありありと見えた。いろんなことを若いダンサーたちに伝えていこうとしてるんだな、と思うとものすごく胸が熱くなった。そしてリズムのダンサーに語りかけていたように、観客の一人一人にも語りかけていて、同じ目線の高さで話しているようだった。「私が踊るのはもう最後だけど、後は頼みました、あなたたちに任せるので大丈夫よ」と慈愛に満ちた表情で。観客への惜しみない愛情も感じられて、それを思うとあふれる涙を抑えられなくなった。彼女は100年に一度の天才で大スターで女神様だけど、同時に一人の人間でもあり、同じ高さで接してくれる、私たちの間のスターなのだ。

そのシルヴィの姿は、『Bye』の中に登場するシルヴィとオーバーラップした。普通の年齢相応の女性だけど、靴とカーディガン脱ぐと踊りは凄くって奔放で美しくて強くて、でも最後にはまた靴を履いてカーディガン着て、扉の向こうの市井の人々の中に紛れて消えていく。それからも彼女の人生は続いていくけれども。

『ボレロ』が終わってカーテンコール、満ち足りた表情のシルヴィの笑顔が眩しいけど、涙も光っていた。そして、一度緞帳が下りると、「Bye」にも使われたベートーヴェンのピアノソナタが流れ、ホリゾントには、今までのシルヴィの踊った作品、バレエ学校時代の「二羽の鳩」から始まり、ヌレエフと踊った「白鳥の湖」、「マノン」、「ルナ」、「シシィ」、「ラシーヌ・キュービック」、「バクティ」、「眠れる森の美女」のオーロラ、オディール、「田園の出来事」、「マルグリットとアルマン」、ル=リッシュとの「椿姫」、「聖なる怪物たち」、「エオンナガタ」、エックの「カルメン」、そして「Bye」の写真が流れて行った。最後は、愛犬と戯れるシルヴィの素敵な笑顔の写真。入り口で来場者に配られたペンライトが客席で振られ、映像に見入っているギエムの後ろ姿は、体を震わせて泣いているかのようだった。客席から数えきれない数の花束が渡され、その花束は『ボレロ』のお盆の前に積み上げられる。東京バレエ団のメンバーが一人一人花を捧げに行った。このあたりの演出は、非常にうまくて、シルヴィにとっても、観客にとっても、とても心に残るフェアウェルとなった。

4演目、あっという間に終わってしまった。終わらないでほしいと思ったけど、すべてのものにはいつか終わりが来るもの。まだ最高の踊りを見せることができるうちに引退をすることを決めたシルヴィの決断は、私たちにとっては悲しいことだけど、彼女にとっては幸せなものだったと思う。自分で辞める時期を決めることができて、思い通りの幕引きをできたのだから。私は彼女の熱心なファンではなかったけれども、やはり芸術に対する真摯な姿勢、常に前進していく姿、ファンを大事にする様子、誠実さ、そしてもちろん50歳まで完璧な踊りを見せることができる高いプロ意識と強い意志。天才の影には、人には見せないけれどもとてつもない努力と芸術への献身があったことだろう。これほどの凄い女性ダンサーは100人に一人だったと言っても過言ではないし、その鮮烈な生き方は心の底から尊敬する。舞台にも映し出されていたけれども、これからの彼女の人生も素晴らしいものであることを祈らずにはいられない。きっと凄いことを成し遂げるのではないかと思う。

そしてこんなにも素晴らしいアーティストと同じ時代に生きることができたのは、自分も幸せだったのだと思う。最後の踊りも見届けることができたことも幸せだった。

(ところで、休憩時間にホワイエで、少しお太りになったニコライ・ツィスカリーゼを目撃。彼はシルヴィ・ギエムの大ファンらしい。まもなくワガノワ・アカデミーの来日公演が行われるので一足先に来ていたのだろうか)


『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』−東京バレエ団初演−
[振付]ウィリアム・フォーサイス
[音楽]トム・ウィレムス(レスリー・スタックとの共同制作)
[演出・照明・衣裳]ウィリアム・フォーサイス
[振付指導]キャサリン・ベネッツ
川島麻実子、渡辺理恵、秋元康臣
河合眞里、崔美実、高橋慈生、伝田陽美、松野乃知、吉川留衣

『TWO』
[振付]ラッセル・マリファント [音楽]アンディ・カウトン
[照明デザイン]マイケル・ハルズ
シルヴィ・ギエム

『ドリーム・タイム』
[振付・演出 ]イリ・キリアン [振付助手]エルケ・シェパース
[音楽]武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)
[装置デザイン・衣裳デザイン]ジョン・F・マクファーレン
[照明デザイン]イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作)
[技術監督・装置照明改訂]ケース・チェッベス
吉岡美佳、乾友子、小川ふみ
木村和夫、梅澤紘貴

『ボレロ』
[振付]モーリス・ベジャール [音楽]モーリス・ラヴェル
シルヴィ・ギエム
森川茉央、杉山優一、永田雄大、岸本秀雄

年初のテレビ番組放映情報

あらためまして、あけましておめでとうございます。皆様にとって幸せな一年になりますように。そして素晴らしい舞台との出会いがありますように。

年末、トロントに続きパリ、そして台北と旅行に行ってバタバタしてしまい、さらに右腕に原因不明のしびれがおきてしまって手が使いにくくなり、少しブログの更新ペースがゆっくりとなってしまいました。お正月休みが明けたら病院に行かなくてはなりません。(年賀状はまだこれからです)去年の舞台についても、まだまだ全然振り返ることができないでいます。


さて、お正月といえば、元旦のウィーンフィル・ニューイヤーコンサート。今年はイリ・ブベニチェク振付で、衣装もとても素敵だったし、物語仕立てで楽しめましたね。過去のバレエシーンの紹介として、ルグリやマラーホフが踊る姿を少し観られたのも良かったです。見逃した方には、再放送があります。
http://www4.nhk.or.jp/P2992/

BSプレミアムで1月11日(月・祝) 午前0:40~です。日曜日の深夜ですのでご注意くださいね。


1月3日には、恒例のNHKニューイヤーオペラコンサート。今年は、中村恩恵さん、首藤康之さんが出演して踊ります。鈴木優人さん演奏のオルガンで中村さん振付の新作デュエットを踊るとのことです。

1月3日(日) 午後7時~9時[Eテレ・FM](生放送)
https://pid.nhk.or.jp/event/PPG0268861/index.html


1月4日(月)0:00~4:52(3日(日)深夜)(アンコール放送)NHK BS プレミアム「プレミアムステージ」
(二本立て後半の放送となります。後半の放送時間は3:17~4:52)
「かがみのかなたはたなかのなかに」
作・演出:長塚圭史
振付: 近藤良平
出演: 近藤良平 首藤康之 長塚圭史 松たか子
http://www.nntt.jac.go.jp/play/news/detail/151221_007912.html


1月4日(月)には、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の放送10周年スペシャルが放映されます。これまで出演したプロフェッショナルたちの「その後の挑戦」を新たに取材するということで、2007年4月24日放送 第49回登場と、2010年10月25日放送 スペシャルに登場した吉田都さんも出演します。

1月4日(月)夜22:00~48 NHK総合 
http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html#20160104


1月4日(月)の「国際報道」では、【新日本人①】 映画化された伝説のバレリーナ・西野麻衣子という特集があります。
この週の「ワールド・ラウンジ」は、様々な分野で世界をリードする「新日本人」をシリーズで伝える。第1回目は、ノルウェー国立バレエ団所属の日本人ダンサー・西野麻衣子さん(35)。同バレエ団の最高位であるプリンシパルを出産後も務める世界屈指のバレリーナだ。今年、西野さんのドキュメンタリー映画「Maiko ふたたびの白鳥」が公開され、世界的にも注目を集めている。出産を経て衰える身体を鍛えながら、世界と向き合う西野さんの原動力に迫る。


1月4日(月)夜22:00~50 NHK BS1 
http://www6.nhk.or.jp/kokusaihoudou/

以前もご紹介しましたが、1月 9日(土)は、WOWOWがバレエ特集を行います。
ロシア名門マリインスキー・バレエの世界> 

1月 9日(土)15:00 〜WOWOWライブ
<ロシア名門マリインスキー・バレエの世界>
「ラ・バヤデール」 (テリョーシキナ、シクリャーロフ主演)

1月 9日(土)17:15 〜
WOWOWライブ
<ロシア名門マリインスキー・バレエの世界>
「ロミオとジュリエット」 (ヴィシニョーワ、シクリャーロフ主演)

1月 9日(土)20:00 〜
WOWOWライブ
映画「ビリー・エリオット ミュージカルライブ/リトル・ダンサー」(2014年・英)

1月 9日(土)23:00 〜
WOWOWライブ
<ノンフィクションW>
祖国へ捧げるバレエ
“世界のプリマ”ニーナ・アナニアシヴィリの道
(再放送)


1月9日(土)21:00~
ドラマ「刑事バレリーノ」
「Hey! Say! JUMP」中島裕翔主演、堤幸彦監督のスペシャルドラマ。幼少時にバレリーノ(男性のバレエダンサー)を目指し将来を嘱望されていた経歴を持つ新人刑事が主人公。辻本知彦がバレエ指導を行っている。
http://www.ntv.co.jp/ballerino/


1月27日(水)22:25-22:50 NHK Eテレ
「ダンス 振り付け師が明かす創作の秘密」ウェイン・マクレガー、吉田都 
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/topics/151216.html


1月30日(土)13:00 〜
WOWOWプライム
<ノンフィクションW>
ワガノワ名門バレエ学校の秘密〜くるみ割り人形への110日〜


1月31日(日)午前0:20~4:20(日曜深夜、月曜早朝)
プレミアムシアター
マリインスキー・バレエ「アンナ・カレーニナ」
ロパートキナ、エルマコフ主演

サンクトペテルブルク白夜祭2008
マリインスキー・バレエ「火の鳥」「春の祭典」「結婚」
ゲルギエフ指揮

http://www.nhk.or.jp/bs/lineup/pdf/bsp_thismonth.pdf

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マリインスキー・バレエ ラ・バヤデール LA BAYADERE [DVD]
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2015年のバレエ界の出来事

まだ自分の個人的な鑑賞記録を振り返る余裕がないのですが、2015年のバレエ界の出来事についてちょっと振り返ってみようと思います。

フランスのバレエ・サイトDanses Avec la Plumeでの情報をベースに、自分の収集した情報や考察を加えて行ければと思います。
http://www.dansesaveclaplume.com/en-coulisse/2015-bilan-dune-annee-danse/


2015年のバレエ界の2大ニュースといえば、マイヤ・プリセツカヤの逝去とシルヴィ・ギエムの引退だと思われます。どんな出来事があったか、振り返ってみましょう。

<引退>

最大のニュースの一つが、シルヴィ・ギエムの引退でした。50歳を区切りとして、大晦日に東急ジルベスタ―コンサートで最後のボレロを踊った姿は皆さんの記憶に新しいことでしょう。今年は世界文化賞も受賞し、そして世界中で引退ツアー「Life in Progress」を行い、新作中心の公演で最後まで前進し続ける姿を見せてくれました。バレリーナの新しい地平を切り開いた、革命的な存在でした。

また、大物の引退としては、5月18日に「マノン」でパリ・オペラ座に別れを告げたオーレリー・デュポンのアデューがありました。オペラ座の黄金時代を象徴する存在として、そしてその美しさで人気を博した彼女、最後の公演はテレビと映画館での生中継が行われるほどでした。オペラ座のダンサーを引退した後は、メートル・ド・バレエに就任する予定でしたが、結局就任はしませんでした。オペラ座公演のための振付指導などは、作品ごとに行っているようです。また、ダンサーとしての活動も続けるとのことです。来年は、バンジャマン・ペッシュが「イン・ザ・ナイト」で引退することが決まっています。

エトワールではありませんが、パリ・オペラ座のプルミエ・ダンスーズとして活躍し、「くるみ割り人形」ではクララ役で主演、また「水晶宮」でプリンシパルを踊ったりして、オペラ座らしいエレガンスの持ち主として定評のあったノルウェン・ダニエルは、「天井桟敷の人々」でオペラ座に別れを告げました。スジェで終わってしまったものの、端正な容姿で日本でも人気があったヤン・サイズは、大晦日の「ラ・バヤデール」のインドの踊りが最後の舞台となりました。サイズは、オペラ座学校の教師に就任するそうです。

ロイヤル・バレエでは、ゲスト・プリンシパルとして高い人気を誇り、ABT、ボリショイなど世界中のバレエ団でも活躍したカルロス・アコスタが、自身の振付けた「カルメン」で11月12日にロイヤル・バレエを去りました。この公演は、映画館中継が行われ、日本でも、1月23日より映画館で上映されます。アコスタは、1月8日より、ロイヤル・オペラハウスのリンバリー・スタジオでウィル・タケット振付の「エリザベス」をゼナイダ・ヤノウスキーと踊ります。5月には、「A Classical Farewell」と題した、クラシックバレエに別れを告げるツアーを英国内で行います。

また、ロイヤル・バレエの英国人プリンシパルだったルパート・ペネファーザーが、夏のシーズンオフに突然の退団を発表しました。まだ若いものの、怪我に悩まされてあまり活躍できずに残念でした。愛らしい役柄が得意で、K-Balletにも頻繁にゲスト出演したロベルタ・マルケスは、12月に退団が発表されました。来シーズンもロイヤル・バレエにゲスト出演し、正式なさよなら公演も行われる予定です。

ハンブルグ・バレエのプリンシパルとして活躍し、妖艶な持ち味のオットー・ブベニチェクは、6月に「ニジンスキー・ガラ」を最後に退団しました。彼の双子の兄弟で振付家としても活躍しているイリ・ブベニチェクは、11月に「マノン」のデ・グリュー役でドレスデン・バレエを退団しました。イリ・ブベニチェクは最近振付家として引っ張りだこで、今年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートのバレエの振付を行い、また彼の作品"L'Heure Bleue"は1月30、31日に東京シティ・バレエで上演されます。兄弟でのガラ公演などの活動も続けるとのことです。彼の同僚で「ブベニチェク・ニューイヤーガラ」で来日した、パリ・オペラ座バレエ出身のラファエル・クムズ・マルケも、6月にデヴィッド・ドーソン振付「ジゼル」で引退しました。

世代交代が進むABTでは、6月にジュリー・ケント(「ロミオとジュリエット」)、パロマ・ヘレーラ(「ジゼル」) シオマラ・レイエス(「ジゼル」)の3人の女性プリンシパルが引退しました。ジュリー・ケントはABTのスタジオ・カンパニーとジャクリーン・ケネディ・オナシススクールの教師となり、パロマ・ヘレーラは母国アルゼンチンで「ロミオとジュリエット」を踊っての盛大な引退公演を行いました。シオマラ・レイエスはバレエ・フェスティバルのディレクターを務めるとともに、ダンサーとしての活動は続けています。

アメリカのバレエ団では、NYCBのプリンシパルであったジェニー・ソモジ、ボストン・バレエのプリンシパルでゼナイダ・ヤノウスキーの兄でもあるユーリ・ヤノウスキー(昨年6月の「スター・ガラ」でも来日)、そしてパシフィック・ノースウェスト・バレエのカーラ・ケルブスが引退しました。

バレエカンパニーとしては、トリシャ・ブラウン・カンパニー、人気振付家エドゥアール・ロック率いるラララ・ヒューマンステップス、そしてセダ―レイク・コンテンポラリー・バレエが解散しました。


<続いてはおめでたい話、昇進です>

数ある昇進劇でも、やはり最も華やかなのはパリ・オペラ座バレエでのエトワールへの昇進です。素晴らしい才能を持っていながらなかなか昇進できなかったローラ・エケが、ついに3月23日に「白鳥の湖」でエトワールとなりました。

ロシアでは、マリインスキー・バレエにおいて、ティムール・アスケロフ、キミン・キム、オクサーナ・スコリクの3人がプリンシパルに昇進。超絶技巧の持ち主であるキミン・キムは、パリ・オペラ座バレエ「ラ・バヤデール」へのゲスト出演も大好評でした。オクサーナ・スコリクは、大変長くて美しい脚の持ち主で、来日公演の「白鳥の湖」オデット、オディールも評判が良かったようです。

ボリショイ・バレエでは、ザハロワのパートナーもよく務めるデニス・ロヂキン、愛らしい容姿で抒情的な役柄を持ち味とするアンナ・ニクーリナ、そしてテクニシャンのアナスタシア・スタシュケヴィッチがプリンシパルに昇進しました。

ウィーン国立バレエでは、7月の沖縄公演の「こうもり」でルグリ相手に好演したケテヴァン・パパヴァがプリンシパルになりました。グルジア出身の美しいダンサーです。バーミンガムロイヤル・バレエではマティアス・ディングマンがプリンシパルに。

ABTでは、フィリピン系で、遅咲きながらも美しいステラ・アブレラ、メディアへの露出も多く大センセーションを巻き起こしているミスティ・コープランドがプリンシパルに昇進しました。コープランドは、ABT初のアフリカ系アメリカ人女性プリンシパルです。

ナショナル・バレエ・オブ・カナダでは、江部直哉さんと、エレーナ・ロブサノワがプリンシパルに。江部さんはまだ若く、日本人男性では久しぶりのメジャーカンパニーでのプリンシパルです。「ジゼル」のアルブレヒトなど、貴公子役も似合い技術にも優れています。

昨年、パートナーの加治屋百合子さんとABTからヒューストン・バレエに移籍したジャレッド・マシューズ。加治屋さんは一昨年プリンシパルになりましたが、ジャレッドも「じゃじゃ馬馴らし」でプリンシパルに。昨年夏の、堀内元さんによる「Ballet to the Future」では、二人で素晴らしい「ドン・キホーテ」を見せてくれました。

また、オーストラリア・バレエでは、近藤亜香さんがプリンシパルに。男性ダンサーほど珍しくはないものの、このような大きなカンパニーで日本人女性がプリンシパルに昇進することは嬉しいことです。「ワールド・バレエ・デー」では、近藤さんはパートナーのチェン・グォンウーと「眠れる森の美女」の青い鳥パ・ド・ドゥと踊り、見事な技術を見せてくれました。


<トップの交代>
2014年に起きたボリショイ・バレエのセルゲイ・フィーリン襲撃事件。映画「ボリショイ・バビロン」でも起きた衝撃的な出来事ですが、フィーリンの契約が更新されないことが明らかになり、後任が誰となるかは注目の的でした。結局、現在ミラノ・スカラ座の芸術監督を務めているマハール・ワジーエフ(元マリインスキー・バレエ芸術監督)が就任することになりました。スカラ座でのラトマンスキーらによる復元作品の成功などが評価されたようですが、ボリショイ劇場は魑魅魍魎蠢く世界なので、どうなることでしょう。

キエフ・バレエの芸術監督を務めていたものの、解雇されてしまったデニス・マトヴィエンコ。ボリショイやマリインスキーなどにゲスト出演していましたが、ノヴォシビルスク劇場バレエの芸術監督に就任することが発表されました。ノヴォシビルスク劇場の芸術監督はイーゴリ・ゼレンスキーですが、ゼレンスキーはモスクワ音楽劇場バレエに加え、ミュンヘン・バレエの芸術監督にも就任するなど3足の草鞋状態となってしまったので、そのうちの一つの職務がマトヴィエンコに降ってきたわけです。

日本でも「PLUTO」をクリエイションするなど、世界中で大活躍している振付家のシディ・ラルビ・シェルカウイ。彼は、ロイヤル・バレエ・オブ・フランダースの芸術監督に就任することになりました。ロイヤル・バレエ・オブ・フランダースは、かつては、フォーサイスカンパニー出身で彼の作品の振付指導に定評のあるキャサリン・ベネッツが芸術監督でした(東京バレエ団で初演された、「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」の振付指導も担当)。彼女が解雇されてしまった後、カンパニーはやや迷走状態でした。バレエ的な作品はほとんど作ってこなかったシェルカウイが、カンパニーをどのような方向に導いていくのか、注目されます。

パリ・オペラ座バレエのエトワールとして活躍してきたエレオノラ・アバニャートは、ローマ歌劇場バレエの芸術監督に就任しました。引き続きオペラ座でも踊っており、先日のピナ・バウシュ「春の祭典」にも出演していましたが、二足の草鞋を履いていることになります。ローマ歌劇場バレエは、他のイタリアの劇場同様、深刻な財政問題に苦しんでいますが、イタリアではセレブとして著名な彼女の手腕に期待したいところです。

また、日本では、東京バレエ団の芸術監督に、プリンシパルの齊藤友佳里さんが就任しました。ロシアでバレエ教師の資格を持ち大学院でも学んだ彼女は、早速、ブルメイステル版の「白鳥の湖」をレパートリーに入れることを発表し、2月に初演が実現します。


<移籍>
最近はダンサーがキャリアアップなどでカンパニーを移籍することが普通になってきました。

オランダ国立バレエからは、イザック・エルナンデスがイングリッシュ・ナショナル・バレエに、そしてユルギータ・ドロニナがナショナル・バレエ・オブ・カナダに移籍しました。イザック・エルナンデスは、ゲストダンサーとしても最近は大きな活躍を見せ、パリ・オペラ座バレエの「ラ・バヤデール」ではソロル役として高い評価を得ました。マリインスキー・バレエへの「ドン・キホーテ」でのゲスト出演も果たしました。ユルギータ・ドロニナは、ナショナル・バレエ・オブ・カナダの「冬物語」で主演して大評判となったほか、母国リトアニアで主催した、ワディム・ムンタギロフ、ジョシュア・オファルト、マリア・アイシュヴァルト、アシュリー・ボーダー、ウラディスラフ・ラントラートフなど世界的なスターを大勢招いたガラを成功させました。

ダンサーの流出が相次ぐシュツットガルト・バレエ。プリンシパルのアレクサンダー・ジョーンズはチューリッヒ・バレエに移籍しています。また、ソリストのラケーレ・ブリアッシはボストン・バレエに移籍しました。

パリ・オペラ座で何回も主演しながら、プルミエールにも昇進できなかったマチルド・フルステは、サバティカルを取って期間限定で移籍したサンフランシスコ・バレエで大活躍。2年目が終わった昨年、オペラ座には戻らずサンフランシスコ・バレエに完全移籍すると発表しました。期間限定移籍といえば、ロイヤル・バレエのファースト・ソリスト、メリッサ・ハミルトンは1年間、ドレスデン・バレエにプリンシパルとして移籍し、イリ・ブベニチェクの引退公演となった「マノン」でマノン役を演じました。

サンフランシスコ・バレエの看板プリンシパルの一人で、各地のガラ公演で活躍しているマリア・コチェトコワは、サンフランシスコ・バレエに籍を残しながらも、ABTにも入団しました。もう一人、デンマークロイヤル・バレエのプリンシパルで、世界バレエフェスティバルにも出演したアルバン・レンドルフ。彼も、デンマークに籍を残しながらABTにプリンシパルとして入団しました。ボストン・バレエのプリンシパルで、6月の「スター・ガラ」で倉永美沙さんの相手役を務めたジェフリー・シリオは、ソリストとしてABTに入団しました。


<訃報>
シルヴィ・ギエムと共に、20世紀を代表する偉大なバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤが5月2日に亡くなりました。89歳でした。彼女の90歳の誕生日となるはずだった11月には、盛大な追悼公演が行われ、また今年の2月にも、マリインスキー・バレエがニューヨークのBAMで、ロパートキナ、ヴィシニョーワを中心とした彼女へのオマージュ公演を行います。

衝撃的だったのが、ニュー・アドベンチャーズの「白鳥の湖」で日本でもおなじみだったジョナサン・オリヴィエの交通事故死。主演していた「ザ・カーマン」の公演が行われる8月9日の朝に亡くなってしまいました。38歳の若さでした。サドラーズ・ウェルズ劇場では、彼を追悼する公演が行われ、収益は彼の幼い二人の息子の教育費にあてられるとのことです。

NYCBの元プリンシパルで、同バレエ団の教師を務めていたアルバート・エヴァンスも、46歳という若さで、6月22日に亡くなりました。珍しいアフリカ系アメリカ人のプリンシパルで美しい肉体の持ち主でした。ロイヤル・バレエの元プリンシパルで、ヌレエフのパートナーに若くして抜擢されたブライオニー・ブリンドも12月7日に55歳で、またABTの元プリンシパルで、「ロミオとジュリエット」のマキューシオ役が当たり役だったヨハン・レンヴァルも8月27日に55歳で亡くなっています。

ロイヤル・バレエでプリンシパル引退後も、キャラクテールとして長年活躍してきたデヴィッド・ドリューが10月16日に77歳で亡くなりました。ロイヤル・バレエの「ラ・バヤデール」「白鳥の湖」の衣装をデザインし、さらにK-Balletのほとんどの全幕作品の美術・衣装を手掛けてきたヨランダ・ソナベントは11月9日に80歳で亡くなりました。


日本では、早くから海外に出て活躍したのち、スターダンサーズバレエ団の設立にも関わり、のちには青山ダンシング・スクエアを主宰した小川亜矢子さんが1月7日に81歳で亡くなりました。比較的最近まで活躍されていました。戦前の日本のバレエ界の草創期から活躍し、谷桃子バレエ団を設立した谷桃子さんは、4月26日に94歳で亡くなりました。舞踏界の巨人として、「大駱駝艦」を立ち上げ、国際的に活躍してきた室伏鴻さんは、ブラジルのサンパウロなどでの公演を終えてドイツに向かう途中の乗り継ぎ地のメキシコで心筋梗塞に倒れ、6月18日に68歳で亡くなりました。

10月3日には、バレエ評論家の藤井修治さんが82歳で亡くなりました。 NHKのディレクターとして数多くのクラシック音楽や洋舞の番組を手掛けたのち、評論家となります。フリーで番組作りのかたわら、新聞や雑誌などに記事を書く、芸術祭の審査委員や芸術選奨の選考委員をはじめ、舞踊関係の賞の選考委員やコンクールの審査員をつとめていました。ここに彼の素晴らしい連載コラムを読むことができます。


<新作>
ボリショイ・バレエでは、ユーリ・ポソホフ振付の「現代の英雄」、ロイヤル・バレエではウェイン・マクレガー振付の「ウルフ・ワークス」、パリ・オペラ座バレエではジョン・ノイマイヤー振付の「大地の歌」そしてABTではラトマンスキー振付の「眠れる森の美女」(ミラノ・スカラ座と共同制作)といった全幕の新作が振付けられました。中でも、マクレガーの「ウルフ・ワークス」では、アレッサンドラ・フェリが全公演で主演するなど、鮮やかな復活劇を見せ、作品の評価も非常に高くて人気を呼びました。


今年は、バレエ界において素晴らしい出来事がたくさん起きますように。

マッツ・エックの引退ツアー、そして引退後の作品封印

シルヴィ・ギエムのさよならツアーLife in Progressで、彼女が踊ったマッツ・エック振付「Bye」に涙した方は多かったと思います。

数々の傑作を生みだしてきたマッツ・エック。そのエックが、70歳になったのを機に、振付家としての活動に終止符を打ち、それと同時に彼のすべての作品の上演権を各カンパニーから引き揚げ、封印することも宣言しました。この決断は2年前に下したそうです。

フィガロ紙の記事(フランス語)
http://www.lefigaro.fr/musique/2016/01/05/03006-20160105ARTFIG00175-mats-ek-le-choc-des-adieux.php

パリ・マッチの記事(フランス語)フィリップ・ノワゼット氏によるインタビュー。
http://www.parismatch.com/Culture/Spectacles/Chroregraphie-La-derniere-danse-de-Mats-Ek-890115

インタビューにはバイクに乗って颯爽と現れるなど若々しいエックですが、「50年間も踊ってきて、周りに引退しろと言われる前に辞めることを決断した。人生は作品よりも長い」と語っていました。

エックは、「From Black to Blue」と題したツアーをパリのシャンゼリゼ劇場で1月6日よりスタートさせました。「She Was Black」はドレスデン・バレエによって、「Solo for Two」はリヨン・オペラ座バレエのDorothée Delabieと、スウェーデン王立バレエのOscar Salomonssonによって踊られます(シルヴィ・ギエムのために振付けられた「スモーク」のリメイク)。そして新作「Axe」は彼の長年のミューズ、アナ・ラグーナと Yvan Auzelyが踊ります。60代のダンサーふたりによる、自分自身の中に閉ざされ、相手に心を閉ざしたカップルを描いた愛と哀しみに満ちた作品だそうです。

作品を封印する理由として、エックは自分が完璧主義者なので、自分が振付指導にかかわっていない形での上演は認められられない、と語っています。今回のツアーは、「ジゼル」など一つの代表作を上演するのではなく、様々な年代に初演された作品を上演し、最後に、新作で締めくくりたい、それも30年間彼にインスピレーションを与えつづけたダンサーたちによる上演で、とのことです。


自分が振付指導にかかわっていない作品の上演を許したくないという振付家の気持ちはわかりますが、彼の素晴らしい作品が観られなくなるのは本当に残念です。上記インタビュアーも語っていますが、ダンス界にとっては大きな損失です。

東京バレエ団とシルヴィ・ギエムによる「カルメン」、ギエムの「Bye」、オペラ座の「アパルトマン」、昨年の横浜バレエフェスティバルで一部上演された「眠れる森の美女」など、実際にライブで観られた作品は少なかったのですが、貴重な体験でした。

エックの作品はいくつかDVD化されているので、これらを通して彼の世界に触れるしかなくなります。

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シルヴィ・ギエム「BYE」アジュー [DVD]
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マッツ・エック振付 アダン:ジゼル [DVD]
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追記:
スウェーデン王立バレエの児玉北斗さんに教えていただいたことによりますと、まだ作品上演の契約が残っている作品については、すぐに封印されるわけではないとのことです。

スウェーデン王立バレエでは、木田真理子さんにブノワ賞をもたらした「ジュリエットとロミオ」を、3月にストックホルムで、6月にワシントンDCとオレンジカウンティで上演するとのことです。

ケネディセンターでの上演
http://www.kennedy-center.org/calendar/event/BQBSH

第16回マリインスキー国際フェスティバル/フィリップ・スチョーピン昇進

第16回マリインスキー国際フェスティバルの概要が発表されています。

http://www.mariinsky.ru/en/news1/news2/06_233jan/

プレイビル
http://www.mariinsky.ru/en/playbill/festivale/fest_2015_2016/ballet_fest_233/

3月31日のオープニングを飾るのは、新作「青銅の騎士」。1949年にロスティスラフ・ザハーロフが振付けた「青銅の騎士」を基にしながら(1980年のリバイバル上演に出演したダンサーたちのアドバイスを得て)、ユーリ・スメカロフが新しい振付を追加するものとなります。原作はアレクサンドル・プーシキン、音楽はレインゴリト・グリエールです。

ゲストカンパニーはペルミ劇場バレエで、マクミランの「三人姉妹」、アシュトンの「レ・パルティヌール」、そしてダグラス・リーがこのカンパニーのために振付けたSnow Was Falling を上演します。

4月1日には、「ディアナ・ヴィシニョーワの夕べ」プログラムがあり、カロリン・カールソンの「Woman in a Room」とハンス・ファン・マネンの「LIVE」が上演されます。

今回で四度目となりますが、若手振付家のためのクリエイティブ・ワークショップが開催され、カンパニー内外の若手振付家の作品が上演されます。このワークショップには、マリインスキー・バレエのダンサーだけでなく、ボリショイ、パリ・オペラ座のソリストも参加します。

「ジゼル」、「眠れる森の美女」、「白鳥の湖」、「ラ・バヤデール」が上演されますが、このうちのいくつかの作品にも、パリ・オペラ座のダンサーがゲスト出演するそうです。(まだ誰なのかは発表されていません)

マリインスキー国際フェスティバルの最後を締めくくるのは4月10日のガラ公演です。今年2月にパリ・オペラ座で初演される、バンジャマン・ミルピエ振付の「Appassionata」(マリインスキー・バレエとの共同制作)が上演され、アマンディーヌ・アルビッソンとエルヴェ・モローが、マリインスキー・バレエのダンサーたちともに出演する予定です。なお、この「Appassionata」は、ガルニエでも、5月にオペラ座ダンサーとマリインスキーのダンサーのミックスされたキャストで上演されます。


ちなみに、先日の来日公演では「ロミオとジュリエット」で、負傷したシクリャーロフの代わりにロミオ役を見事に務め、さらに「ロミオとジュリエット」の吟遊詩人役や、「白鳥の湖」のパ・ド・トロワなどで活躍したフィリップ・スチョーピンがこのたびファースト・ソリストに昇進しました。
http://www.mariinsky.ru/en/company/ballet/troupe/

身長は高くないものの容姿に恵まれ、正確な技術、端正な踊りを見せられるスチョーピンは、正統派マリインスキーの貴重な存在です。

愛知県芸術劇場2016年ラインアップ、「月夜に煌めくエトワール」公演、あいちトリエンナーレ2016

愛知県芸術劇場の2016年のラインアップが発表されています。

愛知県芸術劇場は、名古屋でのダンス/バレエ公演を多く行っている上に、この劇場でしか観られない独自企画の公演、さらに東京・大阪・横浜・埼玉等の劇場との共同企画など、非常にパフォーミングアーツに力を入れています。

さらに、2016年は3年に1度の国際芸術祭、あいちトリエンナーレ2016が開催されます。勅使川原三郎演出のオペラ「魔笛」、アクラム・カーンともコラボレーションしているフラメンコ界の異端児イスラエル・ガルバン、そして山田うんの新作などを観ることができます。

愛知だけでしか観られない素晴らしい公演もあります。幸い、劇場は交通の便の良いところにあり、夜公演でも東京にその日のうちに帰ることが可能です。
伝説のダンサー、H. アール. カオス 白河直子ソロ公演も、愛知でしか観ることはできません。


新年一回目の主催公演としては、「Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール」があります。エルヴェ・モローがピアニストのジュルジュ・ヴィラドムスと組み、さらにオペラ座からドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオ、ヴァイオリニストの三浦文彰さんも参加します。モローが今公演のため、中村恩恵さんに振り付けを依頼した新作「ツクヨミ」など、贅沢なプログラムが観られます。(一部演目変更がありましたのでリンク先をご覧ください)

Bunkamuraオーチャードホールでの東京公演は、人気につきほぼソールドアウトですが、1月13日(水) 19時の愛知公演はまだよい席が残っているとのことです。しかも、愛知県芸術劇場コンサートホールという、かなり小さめの会場での上演なので、出演者を近くに感じながら観ることができます。

1月13日(水) 19時 愛知県芸術劇場コンサートホール
『Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール』(ダンスコンサート・シリーズ第1弾)
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/etoile/

また、1000円という破格で観られるチャレンジシートが当日発売されます。
販売枚数:50枚程度
座席:3階席後方
※公演当日10:00から愛知芸術文化センター内プレイガイド窓口にて販売(予約不可)。
※おひとりにつき、2枚まで購入可能。
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<愛知県芸術劇場主催>

2月11日(木・祝) 15時、19時30分 愛知県芸術劇場小ホール  *愛知のみ
黒田育世レパートリーダンス公演『ラストパイ』『テトラヘドロン』より抜粋
出演:BATIK、オーディション選抜メンバー  演奏:松本じろ  衣裳:山口小夜子(『ラストパイ』)
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/ws_kuroda/index2.html
国内外で高い評価を得る黒田育世が2005年にNoism05に振付委嘱した伝説的作品『ラストパイ』を、愛知のオーディションで選ばれたダンサーに完全振付。
2016年、愛知県芸術劇場でふたたびよみがえる!
黒田育世のダンスカンパニーBATIKが踊る作品も同時上演。


2月27日(土)14時、28日(日)17時  愛知県芸術劇場小ホール  *愛知のみ
サウンド・パフォーマンス・プラットフォーム2016
出演:27日 伊東篤宏、空間現代ほか 28日 Sachiko M、捩子ぴじんほか
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/spp2016/index3.html
「コンサート」ではこぼれ落ちてしまう前衛的な音楽や、台詞や身体動作に伴う音の作品など、ひとくくりにはできない新たな音のパフォーマンスを一挙に紹介します。 ゲスト4組のアーティストに加えて、公募から選ばれた7組が2日間に分かれて登場。

3月26日(土)15時、27日(日)15時  愛知県芸術劇場小ホール  
マレビトの会『長崎を上演する』
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/marebito/index.html
このプロジェクトは複数の作者が一つの都市をテーマに戯曲を書き、その上演を行う事を繰り返します。長崎、広島、福島をテーマに、現地取材、戯曲執筆、舞台上演を複数にまたがって継続して行うことで、被爆都市として語られる大文字の歴史ではなく、それぞれの年の日常に流れる時間や内在するドラマを戯曲として抽出し、舞台空間に立ち上げようとする試みです。
愛知公演ではドイツ・ライプツィヒから本プロジェクトに参加する新たな作者が長崎取材を経て書き起こした戯曲を加え、2日間に分けて上演します。海外からの視点を加えた本公演では新たな「長崎」が生成されることでしょう。


4月22 日(金)~ 24 日(日)愛知県芸術劇場小ホール  *愛知のみ
ダンスとラップ 島地保武× 環ROY 
出演・演出:島地保武、環ROY 振付:島地保武 音楽:環ROY 照明:渡辺敬之


7月1日(金)~ 3日(日)愛知県芸術劇場小ホール  *愛知のみ
H. アール. カオス 白河直子ソロ公演 
演出・振付:大島早紀子 ダンス:白河直子 


7月16日(土)愛知県芸術劇場大ホール
Noism1×Noism2 
劇的舞踊『ラ・バヤデール-東洋の幻』
(仮)
演出振付:金森穣  脚本:平田オリザ 
空間:田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE/ARCHTECTS)  衣裳:宮前義之(ISSEY MIYAKE)
出演:Noism1&Noism2、ゲスト俳優 (SPAC- 静岡県舞台芸術センター)
http://noism.jp/npe/la-bayadere_niigata/
金森穣演出振付による劇的舞踊第3弾

8月23日(火)、24日(水) 愛知県芸術劇場小ホール
ファミリープログラム『わかったさんのクッキー』
演出:岡田利規


10 月14 日(金)、15 日(土) 愛知県芸術劇場小ホール
Ver Te Dance『コレクション』
演出・振付:Jiri Havelka  音楽・演奏:クラリネット・ファクトリー・ライヴ


10月16日(日)、18日(火)、19日(水) 愛知県芸術劇場小ホール、大リハーサル室 *愛知のみ
パフォーミング・アーツ・セレクション

11 月6 日(日) 愛知県芸術劇場コンサートホール
白井剛&中川賢一&堀井哲史  (ダンスコンサート・シリーズ第2弾)
『ON-MYAKU 2016 -see/do/be tone-』

振付・構成・ダンス:白井剛 音楽構成・ピアノ: 中川賢一 映像演出: 堀井哲史( ライゾマティクス)


<あいちトリエンナーレ2016主催>
あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラバンサライー創造する人間の旅
開催期間/8月11日(木・祝)~10月23日(日)

http://aichitriennale.jp/

9月17日(土)・19日(月祝)  愛知県芸術劇場大ホール   *愛知のみ
プロデュースオペラ モーツァルト作曲『魔笛』全2幕・ドイツ語上演
指揮: ガエタノ・デスピノーサ  演出: 勅使川原三郎

10月7日(金) ・8日(土)・9日(日) 愛知県芸術劇場小ホール  *愛知のみ
イスラエル・ガルバン『SOLO』

10月15日(土)・16日(日)  名古屋市芸術創造センター  *愛知のみ
イスラエル・ガルバン『FLA.CO.MEN』

10月15日(土)・16日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
カンパニー DCA / フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT』

10月22日(土)・23日(日) 名古屋市芸術創造センター  *愛知のみ
Co.山田うん 『花祭りに纏わる新作(タイトル未定) 』

10月23日(日) 名古屋市青少年文化センター (アートピア) *愛知のみ
青木涼子 『秘密の閨』

*あいちトリエンナーレ2016のすべてのラインナップは3月末の発表を予定しています。



1/11 NHKニュース ウォッチ9でシルヴィ・ギエム特集放送

1月11日(祝・月)、NHKニュース ウォッチ9で、シルヴィ・ギエムの特集が放送されます。
インタビュー、神奈川県民ホールでのツアーラストステージなど、さまざまな側面からギエムのダンサーとしての最後の時間が紹介されます。

 ◆放送日時:1月11日(祝・月)21:00~22:00
 ◆番組名:ニュース ウォッチ9
 ◆放送局:NHK 総合

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/media/nhk-9.html

ニュースウォッチのブログでも少し触れられています。(鈴木奈穂子アナ)
http://www9.nhk.or.jp/nw9-blog/

●「100年に一度の逸材」と言われたシルヴィ・ギエムさん。
2015年末、およそ40年のバレエキャリアに幕を閉じ、惜しまれながら引退しました。
彼女の引退公演の舞台となったのは日本。引退公演を前に、バレエへの思い、そして日本への思いを伺ってきました。
※1月11日(月)放送予定。

1/9、10 新国立劇場バレエ団 ニューイヤー・バレエ

2015/2016シーズン
バレエ「ニューイヤー・バレエ」
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006129.html

指揮:ポール・マーフィー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

年明けを飾るニューイヤー・バレエ、2日間観てきました。


◆セレナーデ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:ジョージ・バランシン
ステージング:パトリシア・ニアリー
細田千晶、本島美和、寺田亜沙子、菅野英男、中家正博

川口藍、仙頭由貴、玉井るい、中田美里、広瀬碧、若生愛
朝枝尚子、飯野萌子、今村美由起、加藤朋子、小村美沙
柴田知世、関晶帆、成田遥、原田舞子、盆子原美奈、
益田裕子、山田歌子(交代出演)
中島駿野、林田翔平、福田紘也、宝満直也

2007年10月に新国立劇場の新国立劇場10周年記念ガラで上演された「セレナーデ」、久しぶりの上演。前回に引き続き、バランシン財団からパトリシア・ニアリーが指導。冒頭の薄闇の中、白いレオタードに長めのクラシックチュチュを着た女性ダンサーたちが右腕を高く掲げ、脚を6番ポジションから1番へと一斉に動かす印象的なシーンから始まる。コール・ド・バレエのプロポーションが美しく、動きも精確にそろえられている新国立劇場にぴったりと合った作品であり、ため息が出るほどの美しさ。ただ機械的に揃っていて音楽に合っていれば良いのではなくて、その中で詩情を醸し出して音楽を身体で奏でることが大切。ストーリーのないシンフォニック・バレエでありながらドラマを感じさせるところも、巧みに見せてくれた。

跳躍と回転の多いロシアンガールは、細田さん。軽やかで透明感があってひときわ美しい。稽古場に遅れたり、転んでしまうワルツは寺田さん。菅野さんとのパ・ド・ドゥにドラマを感じさせてくれた。ダークエンジェルの本島さんは、彼女らしい強い存在感と美しいアラベスクが印象的だった。「くるみ割り人形」が終わってから2週間足らずという短期間なのに、良く訓練されてクオリティの高い上演。新国立劇場バレエ団は、「テーマとヴァリエーション」「シンフォニー・イン・C」といい、バランシン作品の上演はいつも素晴らしいし、このあたりの作品はもっと上演頻度を上げて良いと思う。


◆フォリア
音楽:アルカンジェロ・コレッリ
振付:貝川鐵夫
丸尾孝子、玉井るい、益田裕子、輪島拓也、池田武志、中島駿野

2013年12月「Dance to the Future~Second Steps」で初演された、ファースト・ソリスト貝川さんの作品。古楽を用いて、ほの暗い照明の中始まる。玉井さんのソロから始まり、ダンサーが一人一人ソロを踊り、それがやがて3組のペアでの踊り、全体への踊りへと伝播していく。女性は長いスカートを着用して重心を低く置いた振付で、ナチョ・ドゥアトの影響を強く感じさせるものの、ダンサーそれぞれの多彩な表現力を見せてくれているし、振付言語にもオリジナリティがあって面白い。
新国立劇場の小劇場で初演された作品が、オペラパレスの大きな舞台で上演されたわけだが、広い劇場の後ろまでしっかり届くような、豊饒さを感じさせる魅力的な小品。クラシックバレエ中心のガラで、このようなコンテンポラリー作品、しかもバレエ団のダンサーによる振付の作品が上演された意義は大きい。それぞれのダンサーの魅力が発揮された作品だが、やはり海外カンパニーでの経験がある玉井さん、池田さんの表現力は抜きん出ていて、精神性までも見えてきたほどだった。輪島さんも大人の魅力が光った。


◆パリの炎 パ・ド・ドゥ
音楽:ボリス・アサフィエフ
振付:ワシリー・ワイノーネン
【1/9】
柴山紗帆、八幡顕光
【1/10】
奥田花純、福田圭吾

ガラ公演では超絶技巧でおなじみの演目。9日のペア、高いテクニックを誇る八幡さんにとても期待していたのに、丁寧におとなしくまとめていたのに驚いた。踊りは美しいのだが端正すぎて、八幡さんなら余裕で見せている540も、連続トゥールザンレールもない。柴山さんも、正確なのだが、地味の一言。ガラ公演なので、この手の作品を踊るなら、もっと自己主張して、やりすぎなくらいアピールしても罰は当たらないと思う。

10日は、福田圭吾さんは、見栄えのする派手な跳躍やトゥール・ザン・レールで盛り上げてくれた。奥田さんも優れた技術の持ち主で、けれんみのある、精緻でありながらスピーディなグランフェッテを見せてくれたけれども、ガラ公演なら、スポッティングを変えてのフェッテとか、もっと華やかさを見せてくれて良いと思う。これでは、この演目を得意とするシムキン、コチェトコワらには敵わない。


◆海賊 パ・ド・ドゥ
音楽:リッカルド・ドリーゴ
振付:マリウス・プティパ
【1/9】
木村優里、井澤 駿
【1/10】
長田佳世、奥村康祐

奴隷役のイメージがない、ほっそりとした王子様系ダンサー二人によるアリ。井澤さんは、背中が硬いのが難点だけど、跳躍は高く足先が伸びて美しい。木村さんは、長身で手足が長いのだけど、彼女の問題は右脚のアンドゥオールと、表現の幼さ、未熟さ。手脚のコントロールが効いていないのでポーズが美しくなく、グランフェッテは、トリプルも織り交ぜているので会場は沸くのだが、上げた脚がアン・ドゥオールしておらず、ロン・ドゥ・ジャンブをする位置がかなり前の方でア・ラ・スゴンドではないので、違和感が強い。教師がきちんとリハーサルを見て指導しているのだろうかと疑問を感じた。

10日の長田さんのメドーラは、これぞお手本というほどアカデミックで正確で、9日の100倍良かった。グランフェッテはシングルだが正しいポジションに入って非常に美しい。一つ一つの動きに気品があり、音楽によく乗っていてキラキラ輝いている。きっと長田さんはライモンダを踊ったら素晴らしいだろう。奥村さんのアリも、着地音がなくてマネージュは美しいし、長田さんと息がよく合っていて見た感じのバランスも良い。


◆タランテラ
音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
振付:ジョージ・バランシン
ステージング:パトリシア・ニアリー
【1/9】
米沢 唯、奥村康祐
【1/10】
小野絢子、福岡雄大

「タランテラ」も世界の一流ダンサーがガラ公演で披露しているのでハードルの高い作品。パトリシア・ニアリーが振付指導。9日、米沢さんは、素早い振付を涼しい顔で余裕を感じさせながらこなしていたけれども、ちょっと音に合っていないところが見受けられた。テクニックの強い米沢さんにとっても、この作品はなかなか大変だということだろう。奥村さんははじけていてユーモラスで軽やかだった。
10日、小野さんは音楽性に優れている人なので、米沢さんより合っていたかもしれない。福岡さんは、軽やかに、とはいかないもののこちらも元気よく健闘。捌ける時にキスされる小野さんの茶目っ気ある表情がとてもかわいらしかった。いずれにしても、スピードがあってほぼノンストップで細かい足捌きが繰り広げられるこの作品、ものにするのは並大抵のことではないと実感。


◆ライモンダ より第3幕
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧 阿佐美
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
【1/9】
ライモンダ:小野絢子 ジャン・ド・ブリエンヌ:福岡雄大
【1/10】
ライモンダ:米沢 唯 ジャン・ド・ブリエンヌ:井澤 駿
チャルダッシュ 堀口純、マイレン・トレウバエフ
グラン・パ・クラシック
寺田亜沙子、奥田花純、柴山紗帆、細田千晶、丸尾孝子、若生愛、飯野萌子、原田舞子
江本拓、奥村康祐、中家正博、池田武志、木下嘉人、小柴富久修、清水裕三郎、原健太
ヴァリエーション
寺田亜沙子

「ライモンダ」は、2008/9シーズンでの全幕上演以来、久しぶり。グラン・パ・クラシックからの上演かと思ったら、チャルダッシュ、マズルカと3幕丸々やってくれて舞台装置や群舞も入ってゴージャスだった。王様に貝川さん、王妃に本島さんとキャストも豪華。チャルダッシュはトレウバエフにくぎ付け。キャラクターダンスに定評のある彼だけあって、非常に濃くて見ごたえたっぷり。ほかのみんなもこれくらい濃いといいのだが、ガラ公演なので贅沢は言うまい。

グラン・パ・クラシックは皆さん本当に美しく、一斉に男性ダンサーたちが女性をリフトするところは壮観。男性陣もプロポーションよく容姿が揃ってきた。4人の男性が連続アントルシャ・シス、そして一人ずつトゥールザンレールするところは、バレエ団の実力が出るのだがまずますの出来で、きっちり5番に降りることができるのは奥村さん位だったけど大きな破綻は無し(左から、奥村、中家、原、木下)。そして待ってました、の主役登場。

小野さんはもう完全に別格で、小柄なのに醸し出すプリマオーラの輝きが凄い。ライモンダというキャラクターを完全に理解しているし自信たっぷり。ヴァリエーションはしっかり音を立てて手を叩くスタイル。そしてコーダのパッセの繰り返しも揺るぎないしオフバランスも見事。福岡さんはダイナミックで正確で美しい。ただし、一回目のリフトでは少しだけヒヤリとする場面があった。

米沢さんも、もちろん技術は非常に高く、細かいパ・ド・ブレ、連続パッセのときの揺るぎないバランスとほぼ完ぺきな出来だったが、キャラクターとしては彼女はあまり姫キャラではないのが惜しい。井澤さんは、長い脚、小さな顔、容姿の美しさはまさに貴公子でヴァリエーションは見事なのだが、やはり彼の場合、課題はリフトで、難しいリフトを省略してしまったところがあった。それでも、日本人でこれだけ貴公子らしさがあるのは、井澤さんと奥村さんくらいなのでは、と思わせる華があるのは貴重。

ヴァリエーションは、当初予定されていた五月女さんが怪我で降板してしまったのが残念。寺田さんはちょっと溌剌さに欠けるところがあった。3人の女性によるヴァリエーションもあり、こちらは柴山さん、飯野さん、奥田さんの3人でこの3人が並ぶと奥田さんがダントツレベルが高いのだが、3人ともよくシンクロしていた。

非常に満足度の高い上演だったけど、せっかく豪華な舞台装置つきで三幕丸ごと上演なのだから、踊っていない人たちももう少し演技してくれたらいいなと感じた。「ライモンダ」はプロダクションデザインもとても美しいし、音楽も素晴らしい演目。小野、米沢、長田主演でぜひ全幕上演を近々実現してほしいと思う。

真ん中のクラシックヴァリエーションがちょっと発表会レベルのものがあった以外は充実して贅沢な公演だった。ダンサーに振付される「Dance to the Future」企画から生まれた貝川作品があったのも良かったし、「セレナーデ」と「ライモンダ」の上演レベルはさすがに高く、特に「セレナーデ」は世界に誇れる美しい上演だった。

カンパニーとしては、充実期にあるのが見て取れるが、何しろ公演回数が少なくて役を深められる機会が少ないのがこのバレエ団の残念なところ。今回のガラも、2公演のみだったためか、他のバレエ公演も集中しているこの連休にあってチケットが完売しているということは、もう一公演上演できたのではないかと思われる。

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ライモンダ RYMONDA 新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKS (バレエ名作物語 Vol. 2)
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牧 阿佐美(新国立劇場バレエ団・芸術監督)

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KARAS APPARATUS no.29「ダンスソナタ 幻想 シューベルト」と、no.30「青い目の男」

勅使川原三郎さんのKARAS APPARATUSアップデートダンスシリーズに、去年からすっかりはまっています。昨年、UPDATE DANCEシリーズは、12作品94回もの上演がありました。私も、Vol.20の「ペレアスとメリザンド」を皮切りに、以降9作品を観に行って、それぞれに独創的で、小さな空間の中で美術や照明、音響も考え抜かれ、吸い寄せられてしまうような圧倒的な美しさを見せてもらいました。


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no.29「ダンスソナタ幻想 シューベルト」は、このアップデートダンスシリーズの今年最初の作品。リヒテルのピアノとオイストラフのヴァイオリンソナタで踊ります。地下に降りていくこの空間は、扉が閉じられると漆黒の闇に包まれ、そして最小限の光を浴びた勅使川原さんのソロで始まります。勅使川原さんの動きは重心が低くてゆっくりだけど、一度として止まることはなく完璧にコントロールされています。そして彼が浴びる照明、光と影の加減も計算しつくされていて、身体のどの部分に光が当てていくのかも見事に制御され、その陰影部分だけをとってもダンスといえます。舞台はあまり大きくありませんが、奥行きはあるため、ダンスにも立体感があり、照明の魔法でそれを感じられるのも面白いところです。

次に佐東利穂子さんのソロ。よどみなく柔軟で魔術師的な勅使川原さんに対して、佐東さんはもはや信じがたいほどの凄まじい回転、両腕で空間を切り裂く大きくしなやかで鋭い動きをノンストップで変幻自在に繰り広げて、まるで竜巻のよう。だけど、一つとして同じ動きの繰り返しはなく、とてつもなく激しいのに止まる瞬間はありません。荒い息遣いも、まるで音楽のようです。再び勅使川原さんの踊り、そして佐東さんの踊り。二度目の佐東さんのダンスは、最初はゆっくりと、しかしどんどんまたスピードを上げて行きます。緩急自在で今度はもっとコントロールされています。そして、最後にまた勅使川原さんが踊るのですが、このパートがとにかく凄かった。

勅使川原さんは、まるで魔術師のようで、その身体で音楽を創造するマエストロでした。音楽と共に踊るのではなくて、彼の動きで音楽が生まれる。音楽がこの世に生み出される瞬間を見ているようでスリリングでした。つくづく勅使川原さんも佐東さんもダンスの神様のような人たちだと思いました。一つ一つの音に向き合って、音楽と一体化しつつも、時には音楽をリードしたり、音楽が生まれる瞬間を見せてくれたり。閉じられた空間だけど、一方でこの空間は世界に通じている、なにか壮大な宇宙のような広がりも感じます。勅使川原さんも、佐東さんも、音楽としっかり対話して、そこから喚起されるイマジネーション、インスピレーションによってダンスを生み出している、その対話の結果として、ダンスから音楽が生まれるような逆転の錯覚を起こさせてくれているのだと感じました。


さて、この「ダンスソナタ幻想 シューベルト」に続き、No.30「青い目の男」が1 月16 日(土)より始まります。

勅使川原三郎さんはポーランドの作家ブルーノ シュルツの短編を基に、言葉と身体の新たな関係を追求する創作を3年余りにわたり、両国・シアターX で継続しています。昨年7 月にシアターXで上演された「青い目の男」は、短編「夢の共和国」から想を得て創作され、勅使川原さん自身が “2015 年の創作の中で一番自分の感情に近い部分にある作品” と語る作品とのことです。(私も観て、前半に繰り広げられる、鰐川枝里さんを加えた3人による激しいダンスの圧倒的なパワーと、後半の佐東さんの静寂の中での夢のような崇高な美しさに打ちのめされたのでした) 今回は、アパラタス版として新たに公演される作品となっています。

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アップデイトダンスシリーズNo.30「青い目の男」

【演出・構成】勅使川原三郎
【出 演】勅使川原三郎、佐東利穂子
【会 場】カラス・アパラタス B2 ホール 東京都杉並区荻窪5-11-15 F1/B1/B2
【公演日程】2016 年1 月16 日(土)~23 日(土) 20:00 開演
*1/17 (日),23 (日)は16:00 開演 *1/19(火)は休演日

【料 金】一般 / 予約2,500円[当日3,000円]学生 1,500円 *全席自由

【前売予約】updatedance@st-karas.com へ
[ご希望の日付・住所・氏名・一般または学生・当日連絡のつく電話番号]を送付
*メール予約受付は各回とも前日の24時まで
*学生の方は当日受付で学生証を提示 *開演後の途中入場不可
【問い合せ】カラス・アパラタス 03-6276-9136 http://www.st-karas.com/karas_apparatus/

勅使川原さんは、このアパラタスでの12作品94公演に加え、国内外のツアー公演やパフォーマンスは44公演で、合計138公演も行っています。アップデートダンスシリーズは再演作品もありますが、ほとんどは新作というわけで、彼のクリエイティブなエネルギーも、ダンスの技術も衰えるところを知りません。アップ―デートダンスという名前の通り、作品は日々アップデートされて全く同じ公演は一つもないとのことです。小さな親密な空間で、ダンスが生まれる瞬間のスリルを味わいに、ぜひ足を運ばれることをお勧めしたいと思います。また、毎回公演後、勅使川原さん、佐東さんによるトークもあり、こちらも毎回とてもインスピレーションを与えてくれます。


1月28日からは、 アップデイトダンスNo.31「静か 無音のダンス」も上演されます。

【演出・構成】勅使川原三郎
【出 演】勅使川原三郎、佐東利穂子
【公演日程】2016 年1 月28日(木)~2月4日(木) 20:00 開演
*1/30 (日))は16:00 開演 *1/31(日)は休演日

オニール八菜さんとカール・パケットが、京都バレエ団「ドン・キホーテ」にゲスト出演

パリ・オペラ座バレエの11月の昇進試験でプルミエ・ダンス―ズに昇進したオニール八菜さん。オペラ座では、すでに「白鳥の湖」、「パキータ」、そして「ラ・バヤデール」のガムザッティなど主役級を踊っていますが、日本でも主演することになりました。

毎年夏にパリ・オペラ座から豪華ゲストを呼んでいる京都バレエ団の公演です。今月オープンしたロームシアター出の公演です。
http://www.kyoto-ballet-academy.com/a_ballet.php

2016年7月24日
ロームシアター会館オープニング事業
京都バレエ団「ドン・キホーテ」全幕

オニール八菜(パリ・オペラ座バレエ団)
カール・パケット(パリ・オペラ座バレエ団)
シリル・アタナソフ(パリ・オペラ座バレエ団)
演奏:京都市交響楽団。
詳細が決まり次第、ホームページへ掲載


昨年の京都バレエ団の「ロミオとジュリエット」(エロイーズ・ブルドン、カール・パケット主演)は、東京でも公演が行われました。ぜひ東京でもオニールさんの主演を観たいですよね。

東京シティ・バレエ団「Lheure bleue」イリ&オットー・ブベニチェク トークイベント

東京シティ・バレエ団は、『ダブル・ビル』として、ウヴェ・ショルツ振付の「ベートーヴェン交響曲7番」と、イリ・ブベニチェク振付「L'heure bleue」という2作品を1月30日、31日に新国立劇場 中劇場にて上演します。

http://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000009.html

「L'heure bleue(ルール・ブルー)」は日本初演で、弦楽曲にのった美しいビジュアルと軽快でウィットに富んだダンスによる作品とのことです。東京シティ・バレエ団のために、初演より多くの追加振付を行ったバージョンとなっています。


振付指導のために12月中旬から来日しているイリ・ブベニチェクと、衣装、舞台装置、振付助手をしているオットー・ブベニチェクのトークイベントがありました(通訳は芸術監督の安達悦子さん)。

途中、東京シティ・バレエの5人のダンサー(土肥靖子さん、岡博美さん、清水愛恵さん、平田沙織さん、榎本文さん)による実演もありました。(イリによる指導も少し)

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日本とのつながり

イリ・ブベニチェク「16歳の時に初めて来日しました。チェコの振付家に頼まれて、振付のコンクールのための来日で、オットーと一緒でした。その時の審査員にジョン・ノイマイヤーがいて、私たちに興味を持ってくれたのです。キャリアのスタートを日本でできてとても感謝しています。今回が20回目の来日となります。ハンブルグ・バレエでの来日の時には、初めて来たときには6週間のツアーで、プリンシパルになる前でしたが「幻想 白鳥の湖のように」などたくさんの作品を踊りました。また、エトワール・ガラではバンジャマン・ペッシュに招かれて3回来日しています。自分たちの作品をこのガラで紹介できました。そして2013年には、自分たちの作品を踊る企画(「ブベニチェク・ニューイヤー・ガラ」)を開催し、振付家としての出発をすることもできました」


「L'heure bleue」について

「今回は、ゲストとしてではなく、日本のカンパニーに振付を行うという初めての経験で、重要な第一歩として重視しています。ローザンヌ国際コンクールの40周年の時に、芸術監督の安達悦子さんに初めて会って何回か意見交換を行いました。ちょうど、ショルツの「ベートーヴェン交響曲7番」を上演するというので、ダブル・ビルに作品を提供してくれないかと依頼されました。(安達さん「依頼したら快く引き受けてくださいました) いくつか作品を見せたところ、「L'heure bleue」に一番興味を示されたのです」

「L'heure bleue」は、2013年にアメリカのバレエ団(ノース・カロライナ・ダンス・シアター)のために振付けられた作品です。しかし今回は、東京シティ・バレエ団のための新しいクリエーションがほとんどで、もっと長くして、ここのダンサー向けに仕上げました。アメリカで初演した時には、2週間しかなかったので、長くすることができなくて、もっと長い作品にしたいと思っていたので嬉しかったです。12月21日に来日して、時間をかけて長い作品にすることができました。」

「L'heure bleue」とは、蒼い時間、という意味です。パリ・オペラ座バレエにゲスト出演して「椿姫」をオーレリー・デュポンと踊った時に出ていたアイディアです。この時、アニエス・ルテステュ、そしてデュポンと2回ずつ踊り、4週間パリに滞在しました。素敵な作品を思いつくのは、いつもパリなのです。ガルニエは迷宮のようで、いくつものスタジオがあり、小さなスタジオで振付のアイディアを浮かばせていました。また、パリには美術館などがたくさんあって、インスピレーションを得ることができました。この作品は、ギャラリー・ラファイエット(デパート)のショーウィンドーのフレームで、人が芝居している様子を見て浮かんだアイディアから作られたものです。その時音楽を探してみて、朝の4時にはアイディアがバレエになりました。オットーがWebサイトを作っていたりしてコンピューターに強いのです。すぐにオットーに連絡して、コスチュームのことなどを相談しました。」


「L'heure bleue」とは、昼と夜の境目の時間のことです。暗くもなく朝にもなりきらない時間で、愛の始まりでもあり終わりでもある。一生の終わりでもあり、始まりでもあるという意味があります。貴婦人が何かの瞬間に恋におちる(オットー「自分の心をコントロールできなくなる」)。そこには、どうにもならない、コントロールできない、恋したくなくても恋をしてしまうということです」


今後の予定

「この後は、ハノーヴァーに行き、そしてスロベニアのリュブリャナ(スロベニア国立リュブリャナ歌劇場バレエ)で「ドクトル・ジバゴ」を上演します。この作品は、ショスタコーヴィッチの音楽を使っているため、オーケストラの編成が大きくなっています。そのため、オーケストラを舞台の後ろに配置しました」(オットーのPCから、CGによる舞台プランの配置図などをスクリーンに映して見せてくれました)

ここで、東京シティ・バレエの3人のダンサー(土肥靖子さん、岡博美さん、榎本文さん)たちによる一部上演が行われました。クラシックをベースにしながらも、ちょっとひねりがあって官能も感じさせる振付です。

「東京シティ・バレエ団のダンサーたちは、それぞれが美しいキャラクターの持ち主なので、才能やキャラクターを大事にしたいし、怪我をしてほしくなくてこの5人で踊ってほしいので、ここで踊るのは少しだけにします」


作品のクリエイションについて

オット―・ブベニチェク
「イリは、伝統とモダンを結合させることを考えています。通常は劇場に合わせて作品を創るので、スタッフとともに劇場に行って照明を合わせ、プランを見ながら発展をさせていきます。新作を創るときに最初にやることはカンパニーへと足を運び、そして劇場に行ってインスピレーションを得ます。ドルトムントで振付けた「ピアノ・レッスン」(ジェーン・カンピオン監督作品のバレエ化)を創るのには1年かかりました。作品の舞台であるニュージーランドにも旅をしてリサーチをしました」

イリ
「まず物語があることが大切です。ストーリ―が語り掛けてくるかどうかが、です。今回の作品は内包したストーリーで大きく作ってはいません。大きな劇場で上演する時にはそれにあった作品を創ります。ジョン・ノイマイヤーは、物語を語るバレエを創るので有名な振付家でした。特にオットーは、ノイマイヤー率いるハンブルグ・バレエで23年間働いていたので影響を受けています。私は新しいムーブメントを創ることに興味があります。チェコでは、演劇の伝統があり、良い劇場も、演劇学校もあります」

「今回、チェコのテレビ局が日本にやってきて、私たちのドキュメンタリーを撮影しています。とても有名なプロデューサーで、1年前のプラハでの私たちの公演を観て魅せられたとのことで、1年間私たちを追ってきました。9月30日に、このドキュメンタリーを大きな映画祭に出品する予定です。監督は、イリ・キリアン、そして民主化されたチェコの初代大統領ハヴェルのドキュメンタリーも撮ってきた人です。私たちは、子供のころにチェコの伝統的な物語を子供向けに作った彼の作品を観ていて、影響を受けました。また、私たちの両親はサーカスでアクロバットをしていたのですが、この監督はサーカスについての作品も作っていて、その作品に子供時代の私たちも出演していたのです」

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<質疑応答>
Q 日本のバレエ団と仕事をしていかがでしたか。

イリ「日本では、人を助けてくれるという姿勢があると感じています。ヨーロッパでは、人に助けてもらおうという姿勢の人が多いですが。ここではみんな私を助けてくれて、歓迎してくれました。バレエ団ではダンサーたちは一生懸命にやってくれて、振付が終わると映像に撮って、次に会った時には振付をきちんと覚えています。このバレエ団のダンサーたちは才能のある人たちですが、クラシック寄りのバレエをやってきています。私の動きをやってみることで、ヨーロッパでの現代的なものが加えられていくと思うし、私の思いも汲んでくれていると思います」

オット―「カンパニーから私たちも学んでいます。今日も学んだことがありました」

Q お二人は一卵性双生児ですが、どのような違いがありますか。

オット―「生きていく中で私たちも変わっていきます。ノイマイヤーは、私には官能的だったりシリアスな役を与えることが多くて、ティボルトやロミオを演じました。イリにはマキューシオのようなハッピーが役が多かったのですが、彼も変わっていきます。踊りという面では、イリの方がシャープで、私の方がソフトです」

Q これからのキャリアについて

イリ 「ダンサーとしてはそろそろ引退します。踊ることと作品を創ることのバランスが難しいからです」

オット―「自分の限界を知ることは必要なことです。辞めることも大切なことです。私たちは41歳となり、自分たちのカンパニーを持つ夢があるので、今スタートしなければなりません。私たちの創作を世界に見せたいと思っています」

イリ 「ドレスデンで引退した3,4日後には振付をし始めました。2,3年先まで振付の予定はいっぱいになっています。ハノーヴァー、リュブリャナの仕事もありますし、この公演が終わったらサンフランシスコに行きます。また、『オルフェウス」を振付ける予定もあります。これは1時間の作品で、ダンサーは3人、自分たちと女性ダンサー、そしてチェコの俳優と音楽家が参加しています。良い作品だったら日本に持っていきたいです」

Q 日本の伝統文化に影響を受けましたか?

イリ「能からは影響を受けていると思います。また、日本の震災と原発事故には衝撃を受けて、チャリティガラを開催して日本に寄付をしました。日本からは多くの者を与えてもらったので。ドレスデンでは、60人のコンテンポラリーダンサーや俳優、ミュージシャンと共に、能にインスピレーションを得た作品を創って、4公演を行いました。美術館の中のいろんなところで動き回り、観客がダンサーの後をついて行くというものです。2日間で5000人の人が美術館を訪れ、美術館の方も喜んでいました。将来、日本の古い物語や歴史についての本を読んで、作品を創りたいと思います」

Q 作品を創るときに、先ほどはCGを見せてもらいましたが、模型を作ることはありますか?

オット―「模型を作ることはあります。その方が早いことがあるからです。PCでは、CGを使って物体の中に入っていくことができます。将来はコンピューターの中に入って踊ってみたいです。イリはこういうことに全く興味がないそうです」

イリ「オットーは自分でこれを全部独学で学んだんですよね」

オット― 「作品作りの他、自分たちのウェブサイトも作っていますし、Bbootiesというブーティ(バレエシューズの上に履く、足を覆うウォームアップ用のブーツ)のデザインをしていて、これは世界中のダンサーが履いています。美しいものに敏感なのです。壁の表面にも、そして美しい人間にもインスピレーションを与えられます。人のシンプルさや複雑さに興味があります。心の中を作り上げている人々が興味深いと感じています」

Q インスピレーションについて

イリ 「「L'heure bleue」ではギャラリー・ラファイエットでの大きなフレームにインスピレーションを与えられました。ダンサーからもらったアイディアを採用したところもあります。また、ルーヴル美術館にある古い絵にもインスピレーションを得ました。この作品はヨーロッパ的なものですが、日本にインスパイアされた新しい作品もいつか作ってみたいと思います。何か日本人の心に近いもので、バレエにするのに良いアイディアがあったら教えてください」
「「L'heure bleue」はプラハで思いついた時には3分の作品で、アメリカで初演された時には20分の作品となりました。そして日本でさらに膨らませることができた、いわば世界的な作品といえます。最初、プラハのガラで元となった作品を上演した時には、自分たち二人による作品で、アメリカでは、4人のダンサーとなり、そして今回は5人の男性ダンサーと5人の女性ダンサーによる作品となりました」

Q 二人はどうして上手くやっていくことができるのですか?

オット―「二人とも同じ視点を持っているので親しいし、好みも似ています。でも時々は完璧に違っていて、喧嘩することもあります。お互い信じ合っているので一緒に働くことができます。振付やデザインで意見が分かれて喧嘩もしますが、一緒に働いてくれる兄弟がいるのは幸せです」

イリ「オットーがいるので早く振付けることができます。私は子供のように没頭するのが好きです。心配しないで振付けに没頭できます。彼が意見を言ってくれるので考えることができて助かります。でも、最後に決断を下すのは自分です。オットーは衣装や装置も作ってくれるので助かるし、いつも作品に合うものを作ってくれます。「L'heure bleue」は、クラシカルをベースにしているけど、コンテンポラリーのステップもあります。衣装も同じく、クラシックな衣装に現代風なところを加えています。二人の女性は男性用のジャケットを着ていますが、フェミニンな感じがあります。ショートパンツに生脚なので、官能的なのです」

非常に和気あいあいとした雰囲気で進んだトークショーでした。兄弟非常に仲が良いことが見て取れますが、時々オットーが主導権を持っているのかな、と感じさせるところがあったり、似ているようで趣味が違うところも見えたり、大変面白かったです。作品も、とても魅力的なものに感じられました。観るのが楽しみです。


米国のノース・カロライナ・ダンス・シアターでの上演の動画


演出・振付:イリ・ブベニチェク
音楽:J.S.バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」 L.R.ボッケリーニ「弦楽五重奏」ほか
振付助手:オットー・ブベニチェク
バレエミストレス:高木糸子 若林美和
舞台美術デザイン・照明プラン・衣裳デザイン:オットー・ブベニチェク
衣裳製作:工房いーち コスチュミエール
出演:土肥靖子 岡博美 清水愛恵 平田沙織 榎本文 黄凱 浅井永希 沖田貴士 長澤風海 三間貴範

2016年1月30日(土)18:00開演
2016年1月31日(日)15:00開演

新国立劇場 中劇場

SS席: 12,000円
S席:10,000円
A席:8,000円
B席:6,000円
学生席:3,000円
(高校生以上25歳以下の学生対象/要学生証提示)
※30日B席、31日SS席完売
※6歳よりご入場頂けます
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チケットぴあ >> (Pコード446-841)
ティアラこうとうチケットサービス >>

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