突然浮上したバンジャマン・ミルピエのパリ・オペラ座バレエ芸術監督辞任の件ですが、フランス時間の2月4日15時に記者会見が開かれ、その席上でオーレリー・デュポンが次の芸術監督になることが発表されました。
Benjamin Millepied Out at Paris Opéra, Aurélie Dupont In
http://dancemagazine.com/news/benjamin-millepied-leaves-paris-opera-ballet/
記者会見の模様を、ジャーナリストのLaura Cappelle氏がリアルタイムでツイートしていましたので、それを翻訳したものを載せます。
スティーヴン・リスナー総裁
「数週間にわたり、12月にミルピエと、振付をしながら芸術監督としての活動をすることは可能かどうかについて話し合いました。バレエは進化していますが、このカンパニーは、その伝統と遺産における責任を持っています。辞任は彼が出した結論です。アーティストは創造のための時間が必要です。彼はこのカンパニーに多くのものをもたらしました。新しい組織、新しいヘルスケアのシステム、3rdステージ。そして新しいダンサーを数人育てました」
ミルピエは来週2月10日に、彼が組んだ2016-7年のシーズンを発表します。夏より、オーレリー・デュポンが芸術監督としての仕事を引き継ぎます。リスナーは、ミルピエと彼女の間の継続性について強調しました。
リスナー「彼が就任する前には、芸術上のとあるビジョンを持ったディレクションの時代が20年続きました。監督するということは、ダンサーと共にあるということでもあります。オーレリーは、この劇場のすべてのチーム、技術者なども良く知っています。ここは彼女の家なのです」
ミルピエ「初めてオペラ座に来た時には、私はオーレリーのための作品を創りました」「この機会を得て光栄でした。自分の2シーズンを誇りに思いました。でも私にとって重要なのは創作することです。この仕事の今の形態は、私には合わないものです」 「来シーズン、オペラ座のために振付をします。これが、私のカンパニーに対するお礼となります。オーレリーを選んだのは正しい選択だと思います。未来は明るいと思います」
デュポン「私は今日とても幸せです。そして少し驚いています」(ミルピエに献辞をする)
「私はこのカンパニーのためにあふれるばかりの情熱を持っています。私はここに32年もいたのですから。続けて行きますし、バンジャマンがやったことも続けて行きます。私は最善を尽くすと約束します。ある時点で自分に言い聞かせました。私ならできる。自分のホームなのですから」
「私はパリ・オペラ座のダンサーが好きです。彼らは素晴らしいです。オペラ座はクラシックバレエのカンパニーだけど、コンテンポラリーも踊ります。私にとって、その逆はあり得ません」
ミルピエは記者からの質問には答えずノーコメント
リスナー「ミルピエの決断は、振付家との活動とカンパニーを運営することを両立させるむずかしさから下されました」
デュポン「私には振付家の才能はありませんし、創作はしません」(質問に答えて)
デュポンのパリ・オペラ座との契約の期間は定め無し。(ミルピエの場合もそうでした)
デュポン「これはオペラ座バレエとのラブストーリーです。入団する時に一度魂を失ってしまいます。物事を変えるには時間がかかりますし、私は時間をかけて行こうと思います」「一シーズンに13プロダクションあって、古典作品が2作品しかないのは足りません」(来シーズンは古典作品は2作品の予定)
デュポン、昨年メートル・ド・バレエとしての契約締結を拒んだ件について「この二つのことは全く別のことです」
リスナー「この決定と発表は、取り急ぎ行ったものでは全くありません」「ミルピエを任命したことについては後悔はありません。彼が去るのは早すぎるかもしれませんが、他の人は辞めるのが遅すぎました」他の候補について聞かれて「もちろん、他の人も考えました(でも具体的な名前は差し控えた)。前回と異なり、継続性が最優先課題となりました」
リスナー、ミルピエの始めたデジタルプラットフォーム3rd Stageについて聞かれて。「私の戦略の一つです。継続します。ただし、新しい芸術監督を迎えて、より音楽/オペラに重点を置いたものとなるかもしれません」
オーレリー・デュポンの就任についてはまだ書かれていませんが、ニューヨークタイムズの記事が興味深いのでご紹介します。
Benjamin Millepied to Step Down From Paris Opera Ballet
http://www.nytimes.com/2016/02/05/arts/dance/benjamin-millepied-paris-opera.html?smid=tw-nytimesarts&smtyp=cur
問題となったカナルプリュスの番組とフィガロのインタビューでは、昇進コンクールと厳しいヒエラルキーシステム、またパリ・オペラ座学校での教育も批判し、パリ・オペラ座は人種的に多様であるべきと強く主張し、クラシックの技術が十分でないと言っていたとのことです。
ミルピエの施策の一つとして、ウィリアム・フォーサイスをオペラ座のアソシエイト振付家に任命し、またフォーサイスを新しい振付家、音楽家、演出家や歌手を含む芸術アカデミーにも関わらせるようにしました。今回の辞任劇に対して、フォーサイスは、自分の契約が一年契約であること、そしてミルピエが去った後には自身も去ると語りました。「バレエカンパニーは変化するものです。伝統ある組織は変わりませんが」メールでコメントを書きました。
また、5日に初日を迎える新作を振付けたジェローム・ベルは、ミルピエの委嘱を受けた理由は、この組織を再生させるという考えを信じたからだと、電話インタビューで語りました。「オペラ座のダンサーが肉体や精神によって、質問をし始めることもできないようなアイディアをを統合させることを見るのは、非常に興味深いものでした。ここでは君主制のようなやり方になっていて、問題を提起することができるような民主的なシステムではありません」ベルは、これらの問題について語った、作品のプログラムのための文章は掲載されなかったとも付け加えました。「別にかまいませんが、もし批判が許されないのなら、進歩はないと思います」
この記事にはミルピエのコメントもあります。振付活動に専念し、ロサンゼルスに戻るために辞任すると語ってます。そして結果的にオペラ座での仕事は自分が求めるものではなかったとも。
さて、生粋のオペラ座育ちであるオーレリー・デュポンは、オペラ座をどのように運営していくのでしょうか。今回の件でもわかったように、オペラ座は巨大な組織で、芸術監督一人の力ではどうにもならないところも多々あるようです。
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