パリ・オペラ座バレエのエトワール、バンジャマン・ペッシュが定年を迎えるため、2月20日にさよなら公演が行われました。
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Benjamin Pech fait ses adieux à la scène de l'Opéra de Paris ce soir. pic.twitter.com/L4uYPmz3ku
— Opéra de Paris (@operadeparis) 2016, 2月 20
ジェローム・ベルの「Tombe」、ジェローム・ロビンスの「ゴールドバーグ・ヴァリエーション」、そして特別プログラムとして、この日だけ、ロビンスの「イン・ザ・ナイト」とプレルジョカージュの「ル・パルク」のパ・ド・ドゥが上演されました。
ベルの「Tombe」は、オペラ座の3人のダンサーに、自分たちと舞台に立ちそうにない人物を出演させるようにと指定しており、ペッシュのパートでは、彼の長年のファンで毎晩出待ちをしていたシルヴィアンという84歳の女性が登場して舞台に上がり、ペッシュが彼女の手を取ってゆっくりと共に歩き、最後に二人は一緒に席に戻るという感動的なシーンが出てきます。しかし、公演期間中にシルヴィアンは体調を崩し、二人の舞台での様子は映像で映し出されました。
バンジャマン・ペッシュは1986年、12歳の時にパリ・オペラ座学校に入学します。以降30年間、彼はオペラ座と共にありました。92年の入団後も決して順風満帆ではなく、入団後すぐの昇進試験では昇進できませんでした。99年、25歳の時にプルミエ・ダンスールに昇進しますが、なかなかエトワールに昇進できませんでした。ヌレエフ、キリアン、プレルジョカージュ、そしてプティの作品などで定評を得ますが、移籍することも考え、また自身のグループ公演をオペラ座の外で行いました。そして2005年、ようやく上海公演で、ジョゼ・マルティネスが怪我をしたため「アルルの女」のフレデリ、さらに夜公演ではマニュエル・ルグリが怪我をしたために「ジゼル」のアルブレヒトを踊るという、一日で2公演の主役を踊り遂げ、エトワールに任命されます。
エトワールに任命されたのち、ペッシュは定評のあるローラン・プティ作品を始め、古典から現代作品、ドラマティックバレエまで幅広く活躍しますが、2年前に腰を痛めてしまい、思うように踊れなくなってしまいました。そのため、彼は持ち前の演技力を生かし、踊るところの少ないキャラクター的な役柄を演じながら、バンジャマン・ミルピエの右腕として働きました。特に「ラ・バヤデール」ではプロダクション責任者として指導を行うほか、公演に関わるすべてを担当しました。また、日本の観客にとってはペッシュは、2005年に始まった「エトワール・ガラ」の芸術監督として、特に親しみがある存在となっています。
この日特別に上演された「イン・ザ・ナイト」は、若い時に初めて踊ったロビンズの作品だとのこと。ペッシュの相手役はドロテ・ジルベールでした。2番目のパ・ド・ドゥは、ローラ・エケとマチュー・ガニオが、そして3番目はエレオノラ・アバニャートとエルヴェ・モローが踊るという豪華な配役。怪我をする前のペッシュは、ノーブルな役柄も得意としていました。ドロテ・ジルベールとは、初恋の思い出を踊り、デリケートで気品があり、音楽性にあふれた美しいパフォーマンスとなったようです。
そしてもう一つの特別な作品は、腰を痛める前に踊った最後の作品「ル・パルク」でした。「椿姫」でペアを組むなど、ペッシュが最も信頼するパートナーであったエレオノラ・アバニャートと、「解放」のパ・ド・ドゥを踊りました。
Les adieux de Benjamin Pech @operadeparis avec Eleonora Abbagnato. #Dernierbaiser#LeParc#Preljocaj@BalletOParispic.twitter.com/FS7Y9gt2R1
— Valentine Colasante (@v_colasante) 2016, 2月 20
アデューのセレモニーでは、ミルピエとステファン・リスナーが彼を称えるスピーチを行い、そしてペッシュも彼のキャリアを振り返るスピーチを、様々なエピソードを披露しながら行ったそうです。学校時代の思い出、特に思い入れのあったローラン・プティとの関係、エリザベット・モーラン、レティシア・プジョル、クレールマリ・オスタ、そして「ほとんどすべての役で共演した」エレオノラ・アバニャートという4人の大事なパートナーについても語りました。また、キャリア終盤での、ミルピエのアシスタントとしての活動についても。
上記の、オペラ座公式サイトにおけるインタビューでは、引退後は何を行うかについてペッシュは具体的には語っていません。ミルピエがオペラ座の芸術監督として働く今シーズン末までは、芸術監督補佐として引き続きミルピエの右腕として働きます。来シーズン、芸術監督にオーレリー・デュポンが就任した後どうなるかはわかりません。が、このインタビューでも、ミルピエのアシスタントとして働いた経験を活かし、将来は芸術監督としての仕事をしたいと語っています。「エトワール・ガラ」も11年、第5回と長く続く成功を収めており、こちらの経験もきっと生きることでしょう。
オペラ座ダンサー・インタビュー:バンジャマン・ペッシュ (チャコット ダンスキューブより)
http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-paris/paris1601b.html
オペラ座を引退したバンジャマン・ペッシュの踊りを観る最後のチャンスになるかもしれない、エトワール・ガラ2016は、2月25日からチケットがMy Bunkamuraで発売されます。ますますパワーアップしたメンバーをそろえ、これは決して見逃してはならない公演となりました。ペッシュが定評のあるローラン・プティの『ランデヴー』を踊る姿もBプロで観ることができます。
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/16_gala.html
公演日程
2016/8/3(水)~7(日) 全5回公演
出演
エレオノラ・アバニャート(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
アマンディーヌ・アルビッソン(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
ドロテ・ジルベール (パリ・オペラ座バレエ エトワール)
ローラ・エケ(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
バンジャマン・ペッシュ(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
エルヴェ・モロー(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
オードリック・ベザール(パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール)
ユーゴ・マルシャン(パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール)
シルヴィア・アッツォーニ(ハンブルグ・バレエ プリンシパル)
アレクサンドル・リアブコ(ハンブルグ・バレエ プリンシパル)
久山亮子(パリ・オペラ座バレエ 専属ピアニスト)
会場
Bunkamuraオーチャードホール
MY Bunkamura先行販売
2016/02/25(木)
3/6(日)10:00~ 一斉発売